かもめくん。
かもめくんは、羽がないことがコンプレックスだった。
「まったく、こんなに鳥な顔をしているのにさ」
かもめくんは酔っ払うと、いつも愚痴をこぼした。
「でも、飛べるんだからいいじゃないか」
かもめくんは羽がないけど、あるいは鳥以上に自由に空を飛ぶことができた。
「鳥の顔じゃなければ、それでいいんだけどさ……牙のないライオンが、カバみたいに生肉を丸呑みしていたら、みっともないだろう?」
それは確かにみっともなかったけれど、かもめくんの飛び方が僕は好きだった。
「隣の芝生は青く見えるものだよ」
かもめくんはとても上手くやっているけれども、それでも苦労や悩みは尽きない。僕はかもめくんをすごく尊敬している。身体がオットセイなくらいで、泣き言は言ってられない。