草野球。
木枯らしが枯葉を踊らせる祝日の午後、草野球は世界の平和を象徴するかのように行われていた。カァンという乾いた音が、小高い住宅街に響いている。
「まったく、どれくらい暇を持て余していればこんな草野球を見てられるんだろうね」
外野のフェンスの奥には、素人混じりの草野球を眺める男がいた。風がよく吹いていて、肌寒い日だ。
「ひょっとしたら、草野球の神様かもしれないよ」
中堅と左翼の会話は、誰も耳を貸さない。
「神様だとしたら、いったいなんのご利益があるんだろうね」
「たぶん、ボールが真正面に飛んでくるとかじゃないかな」
カァン。グローブ越しに、ボールの息吹が伝播する。
「ナイスプレー!」
「まったく、これだから野球は辞められないね」
次の打席まで、草野球の神様がいてくれればいいんだけども。