果物袋。
ジップロックで閉じた果物を腐らせてしまった。脱ぎ捨てたYシャツとネクタイに隠れて、その存在をすっかり忘れていた。二、三日の小旅行を経て家に帰った僕は、洗濯をする時にそれを発見した。果実は形を保つことを放棄して、マグマに岩が溶けているみたいな格好だった。
その宿命的な袋は、僕に様々なことを示唆した。食べることを楽しみに持ち帰ったのに、忘れていたこと。体力にも気力にも余裕がなかったのかもしれない。果実が腐り落ちても、ジップロックで閉じればその中で完結すること。密閉には色々な用途がありそうだ。ネクタイがほのかに果実で香ったこと。これで次回は幸せに出社できる。腐敗したその姿を久々に目にしたこと。心や体にもそのような部分があるのかもしれない。
僕はポリ袋で重ねて縛って、ゴミ袋に投げた。それにしても旅行は楽しかったし、世の中には沢山の袋がある。