イマジナリー。
イマジナリーな森を抜けようとして、1ヶ月が過ぎようとしていた。
「君は本当に……害しかない楽観主義者だ」
バディの妖精はすっかり参っているようだった。
「申し訳ないとは、思っているよ」
「君は口ばっかりだ」
妖精の溜息も、今はすっかり慣れてしまった。その視覚的な申し訳なさよりも、イマジナリーな森を歩く心地良さが勝っている。僕がこんなにも自己中心的な人間であることに、最も僕自身が驚いてる。
「じゃあ、終わらせてくれればいい」
僕はその返答を持ち合わせていない。バディからの侮蔑や叱責すらも、快感にすり変わっている。
「……ほら、敵が来たよ」
もちろん、これは出来試合だ。僕が敗者を望まない限り、倒せる敵しかダンジョンには登場しない。妖精は本能で、本気のサポートを僕に施す。負けないと頭で分かっていても、そうすることしかできない。
「少し、危なかったね」
「……うるさい 」
神様になったら、さぞかしつまらないとずっと思っていた。しかし、それは欺瞞だった。少なくとも当分の間、僕はこのイマジナリーな森から抜け出せないだろう。そうできる強さを持ち合わせた人なんて、はたしているのだろうか?