笹舟。
時の流れに身を任していたら、見知らぬ場所まで追い立てられた。これが俗に言う遭難という代物かも知れない。ちょうど舟もその役目を果たしたようだし、ここらで岸に降りてみよう。
世界は繋がっていると信じたいけれど、それが幻想ではないかと思ってしまうような茂み。余りにも鬱蒼としていて、僕の爪先から脳天まで受け付けていないことを表明しているみたいだ。けれども、ここで生きていかなければ。地球は自ら回り続けているし、太陽系の周りを回され続けてもいるのだ。
難破した笹舟の一部は、ポケットに入れていた。僕がこの土地に漂流する迄の人生を、僕なりに詰め込んだ笹舟。しかし、思い出は思い出として勝手に残り続けるから、形に残す必要はないとふと思った。まずは、この悪魔のような茂みで夜を凌がなければ。思い出を燃やして、耐えるのだ。そうすれば朝が来る。そうすれば、朝が来るのだ。