天使の束縛。
貴方を好きだから、断ります。貴方を好きだからこそ、私はこの選択をするのです。私は貴方を愛しています。貴方の、良く言えばしがらみに捕らわれない生き方を(悪く言えば、社会性が欠如した、身勝手で常識外れな生き方を)、羨ましく思っていました。
けれども、私は貴方のように強くありません。貴方のように、厚顔無恥でいることが難しいのです。もちろん、私は馬鹿でありませんから、それが間違った道であるとは思えません。それが、多大なる幸福に繋がる可能性がある道であると、頭では理解しています。しかし、身体が動かないのです。周囲の視線に、世間の視線に、左右されるようになったのはいつからでしょうか。私は大勢が求むるが道を、自分を殺して功利的な最大多数が望まれる道を、選択するようになりました。
貴方と堕ちる(世間一般から見れば、ということにしか過ぎず、当人からすれば天にも昇るような心地であります。)ことができれば、どれだけ私の頬は綻ぶでしょう。貴方と過ごすことで、どれだけ私の悩みが、見栄や虚勢が馬鹿らしくなるでしょう。頭では理解出来ます、ああ、私は頭ばかり使う悪いくせがついてしまい、目の前の幸せすら見逃してしまいます。そのことがどれだけ哀しいことか、少し大きい脳味噌では理解しているのに、全身は天使に束縛され動きません。
天使の束縛。私は貴方を諦めることで、このたった一つの人生をも諦めているのです。