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Her locks.

彼女はいつも眠りながらバーカウンターにやってきた。僕はその頃仕事に忙しくて、そのまま寝泊まりしていることがほとんどだった。だから深夜に彼女が来てもいつも扉は開かれていた。まるで司教が駐在する教会みたいに。

「いらっしゃいませ」

僕は儀礼的にそう呟くが、もちろん返答はない。彼女は夢遊の中、居心地の良い場所に佇むだけの水馬アメンボに過ぎない。朝陽が水溜まりを乾かす前に、彼女はこの場所を事も無げに立ち去る。たとえバーカウンターに朝陽が射し込むことはないとしても。

僕は彼女がもたれかかるカウンターを見ながら、葉巻を吸ったり、オリジナルカクテルを試作したりしていた。彼女はとても美しいから、直視するには刺激が強すぎた。彼女を見てしまえば、葉巻は湿気ったし、カクテルにも角が立った。だから、僕はカウンターを見ていた。そこから立ち去ることは、どうしてもできなかった。

僕は彼女の名前も、声も知らない。でも、彼女の長い髪の毛だけは知っている。ハー・ロックス。そのカクテルは、とても苦く完成した。


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