ペンローズの三角形。
ペンローズの三角形。数学のパラドックスは時として思考のメタファーになる。僕の頭の中は今まさにペンローズの三角形の形を象っているみたいだ。どこが交わるその境なのか、検討もつかない。あるいは、渾然一体となる過程であるのかもしれない。その先にあるのは悟りか、諦念なのかはまだ分からない。
思考の堂々巡りは脳にとって苦役を強いているのと同じだ。一般的なホモサピエンスAは、成体に近づくにすれ思考を放棄し始める。あるいは、思考を外注する。自らをその渦中に置くことは、生産的な行為だとは言えないからだ。実際に渦に巻き込まれ、自ら命を絶ってしまう個体すらいる。どれほど波を欲しいがままに乗りこなすサーファーであったとしても、気を弛めば最期。生き長らえたとしても、身も蓋もない死に方をする。
思考さえ取り除いてしまえば、等身大の幸せを得られる可能性は高いだろう。しかし私は、思考の渦の中に身を置いてしまった不憫な個体である。幸せとは思考をしない事だと、私は卑屈にもそう思っている。