斜め向かいの時間軸。
「時間というのは不可逆なものだ。そこで、ひねくれ者の僕達はこう思う。どうにかこうにかすれば、逆向きに進むことが出来るんじゃないか、ってね。そう、過去に向かうってことだよ。絵空事かと思うかな?けれども、科学っていうのは絵空事の連続なんだよ。誰が、宇宙から君が下着の色まで確認できると思っていただろう。誰が、無限に拡がる仮想現実を構築できると思っていただろ。誰が…」
一人の学生は、教授の話を聞かずにノートに夢を描いていた。関数の横軸を書き、過去と未来と両端に記す。縦軸は…此処迄は誰でも思いつきそうだ。だから、学生は斜めに軸を引いた。この45度の線が何を意味するかを我々が知る由もない。しかし、科学は後付けに過ぎず、真理を疑うことなく求める人が結果として科学を味方に付ける。学生は、その斜めの軸を見て場違いに頬笑み、教授に目を付けられていた。