高速道路。

アクセルを強く踏むと、自分が生きていることを実感できる。自分が何者かになったかのような、子供の頃に焦がれた憧憬を僕はフロントガラス越しに見ようとしているのかもしれない。

車線を右に左にリズムよく変える。高速道路の上では、僕を止めるものはいない。鈍行続きのこれ迄が嘘のように、僕は直進を続けることができる。それは、メタファーでもあり、啓示でもある。かりそめの擬似人生。

夏の夜に猛然と走ると、ボンネットには虫の死骸がへばりつく。べっとりと着いた虫の脂は、なかなか取れやしない。僕はそれを拭き取らないといけない。タオルの縁でそれを擦る時、僕は厭な自分に戻っていく。

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