スタートライン。
スタートラインから動けない。やい、どうした俺の脚。動け、動け。身体はイヤイヤ期の幼児みたいに俺の指令を断固拒否。なんだい、いったいどうしちまったんだ。
スタートラインはもう俺に飽き飽きしている。おい、いつまでそうしてるつもりだ。だっせぇなぁ。風に吹き上げられた土埃でさえ、その白線を跨いでいる。
本能が拒絶しているようだ。しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。俺だって覚悟をもって、かなりの犠牲を強いてここに立っているんだ。脚をぶん殴り、無理矢理その脚を動かした。
そして、レースは終わってしまった。俺がスタートラインだと思い込んでいた白線は、ゴールラインだったのだ。