抽出し。
ダリの彫刻を見て、僕はとても写実的な彫刻であると関心していた。肉体の流線はもちろんのこと、身体の節々に収納されている抽出しがとても精緻に表現されている。ダリはシュールレアリスムの代表格だと思っていたが、こういう写実的な側面があることが意外だった。
「とても、写実的だね」
「……写実的?」
彼女は反芻する牛みたいに、一度飲み込んだ言葉の意味を尋ねた。
「ほら、この抽出しの角とか光沢とか、まるで僕の抽出しの生き写しみたいじゃないか」
彼女はその意味を推し量ってから、僕にいささか怪訝な視線を向けた
「冗談にしては……趣味が悪いみたい」
冗談? いまいち話が噛み合わない。帰ったら、僕の身体の抽出しと見比べてもらおう。僕は帰りに、ポケットサイズの画集を買って、腹部の抽出しに収納した。