雲の蜘蛛。
「雲の上には、大きな蜘蛛がいるんだ」
甥は、僕の適当な創作に、奇妙なくらい食いついてくる。
「雨の時はどうするの? 」
「糸を伝って、隣の雲に移るんだ。雲はずっと動いているから、その大きな蜘蛛はだいたい同じ場所にいるんだよ」
「何を食べてるの? 」
「鳥だよ。鳥さんは、時に人間みたいに好奇心が旺盛になるんだ。雲の上に、何があるのか気になると、実際にその羽でやってくる。まさか、雲の上に大きな蜘蛛がいるとは思わないからね。それを、ぱくり。後は水を飲んでいる」
「僕もみてみたいな。おじさんは、物知りだね」
そう言うと、甥は床を陽気に歩いていた小さな蜘蛛を潰した。