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バッドエンド・ロール。

幸福はゼロサムゲームだ。誰かの幸せは誰かの不幸せの上に成り立っていて、その関係性を断ち切ることは決してできない。もしその関係性を超越できれば、その存在は神に等しいんだろうけど、いないということはやはり神様はいないんだろう。

そのことをずっと憂いてきた。幸せを踏みしめても、その下には屍がその腕を伸ばしてきていて、僕の足首を掴もうとしている。逆も然り。僕の苦しみを、愉悦して蹂躙する勝者がいる。人の幸せも、その背後の敗者を思うと素直に祝福ができない。そういう風に思っていた。

でも、それでいいじゃないか。力が届かないことを神に仮託しても、神は宇宙の秩序を守るのに忙しい。地球を律儀に回るように説得したり、太陽が隣の銀河に気を取られないように齷齪したり、神様は忙しい。だから、幸せと不幸せの関係を憂いても無駄だ。たまたま巡ってきた役割の中で藻掻けば、それは立派な人生だ。

踏みしめれば良い。大いに誇ればいい。僕はこの頃の苦しみが、たとえそこで終止符が打たれようとも、その役割を完逐する。バッドエンド・ロールがなければ、ハピネスも存在できないのだから。


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