意地悪な妖精。
妖精は性格が悪かった。
「ほうら、また魔法でも使ってやろうか」
妖精は僕に何度か魔法をかけて、快楽を植え付けた。僕はそれを何度も断ったのに、妖精はまるで押し売りのように魔法をかけた。
「ほうら、たった一言で気持ちよくなれるんだぞ」
始めは、妖精を利用してしまおうと思った。自分を律することに僕は自信を持っていたし、妖精を掌握することで生活を豊かにしようと目論んでいた。しかし、駄目だった。人間はそのように設計されていないのだ。
「ほうら、ほうら」
妖精はにたにたと微笑み、ステッキをちらつかせる。妖精にはそのような性癖があるらしい。魔法を希求する人間の苦悶の表情を見ることに、ちょうど僕が今苛まれているような快楽を感じているのだ。
「ほうら、ほうら」
妖精の声は思考を妨げ、眠りを妨げる。僕はこの声とともに生きていく他がないのだ。ほうら、ほうら。