花浮。

花弁が雪のように舞い落ちる。風に吹かれて、ひらひらと浮遊をする。やがて、ほの濡れたアスファルトに吸い込まれる。ただ、いつまでも風に乗り、私を蠱惑する花弁もいる。まるで君のようだ、私はそう思った。

君は、一人だけ違う時間軸を生きているみたいに不思議な人だった。言動、佇まい、偶然性、全てが私を魅了した。儚く散りゆかんとする君に、私は手を差し伸べ、受け止めた。愛した花があったのに、私は一片の君を選んだのだ。

しかし、君は消えてしまった。私は愛した花を裏切り、君をも失ってしまった。そんな私を嘲笑うかのように、花浮(はなびら)は舞い踊る。私は暫くその踊りを眺めていた。君は綺麗な人だった。私は踵を返し、アスファルトと散り終えの花弁を踏みしめた。

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