目玉。
レポートが溜まっていて、パソコンとの睨めっこが続く。無機質な画面と対峙しながら、無意味に連続する記号を打ち続けるのは骨が折れる。画面を閉じ、一息つく。しかし、エラーばかりの人間とは相反してグレゴリウス歴は正確なピッチを刻み続ける。僕は諦めて画面をもう一度開く。
すると、僕は何かの違和を感じ取った。誰かに見つめられているような、漠然とした傍受感があるのだ。僕は周囲を見渡す。しかし、僕以外にこの部屋に人がいるはずがない。僕は自分に言い聞かせる。これは僕にありがちなエラーに過ぎないんだ。この部屋に、他の人間がいるはずはないんだ。そう自分を諭すごとに、その感覚はより鋭敏になっていく。説明がつかなければおかしくなってしまいそうだ。
僕はその感覚に理由を付けようと必死だった。そして、机に上がっていた付箋を手繰り寄せた。理由付け。僕はその赤い付箋に大きな目玉を書き、パソコンのカメラに貼り付けた。
あの日から、僕はこの不格好な目玉を剥がせないままでいる。あの傍受感はこの目玉によるものなのだ。もしこの説明が引き剥がされてしまったら、僕はどうすることもできなくなってしまうのだ。