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ラブレター。

宛先のないラブレターを毎晩書いていた。それは、日記のような儀礼だった。僕は毎晩、特定の誰かに向ける訳ではなく、自分の愛情そのものを描く文章をあてどなく書き連ねていた。何度推敲しても、それは完璧なラブレターには程遠かった。完璧な文章が存在しないと言ったのは、ピカソの愛人だったっけ?

ラブレターをラブレターたらしめるものさえ、僕にはまだ分からない。使い古された比喩や表現は陳腐でしかないし、グロテスクな内情を吐露したものは吐瀉物にすらなり得ない反吐だ。重力が絶え間なく変化する空間でシーソーをするような不均衡が、ラブレターの難解な性格を物語っている。

例えばそれが完成したら、僕はそれを誰かに贈るのだろうか。それともアブサンに浸して燃やしてしまうだろうか。ピカソの愛人がどちらを好むのかは、火を見るより明らかだけど。

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