霊癖。
生き霊になってしまう悪い癖を直すことができない。もう来月には三十歳になるのに、俺は未だに生き霊になってしまう。まるで幼気な子供のように、感情の赴くままに取り憑いてしまう。俺はいつも、自分の肉体に帰ってから後悔する。しかし眠ってしまえば、いつも他人の肉体で目を覚ます。夢の中で取り憑いてしまうのだから、どうしようもない。
初めて、生き霊になった時の記憶は定かではない。少なくとも三歳か四歳の頃には、息を吐くように生き霊になっていた。幼き頃は情動的だから譲歩はできようが、俺はいつまでたっても生き霊になることをやめられなかった。恥ずかしくて、親にも友人にも相談することができなかった。自分の肉体をおざなりにして、他人の人生に仮託しているなんて、俺は本当に不甲斐ない。
しかし、俺は周囲の人が全員、生き霊にならないほど強いとは思えない。他人になったことはないから分からないが、皆ひっそりと生き霊になっているんだろう。俺はどれだけ強い思いを抱いて眠っても、他人の肉体で目覚めるのだから。