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詩人は空で朽ちる。

空に詩を置いてきた。

照明が穏やかに落とされた機内で、私は一編の詩を認めた。それは、何度か視線がぶつかったCAに宛てたものかもしれないし、叶わない恋に拘泥する自分に宛てたものかもしれない。しかし、私にそのベクトルを知る由はない。詩というものは、言葉という唯一の交流手段を通してあちらからやってくるものだからだ。その先にいるのが、神なのか妖怪なのか、まだ言語化もされていない何かなのか、私に知る由はない。私は何も知らない、傀儡な書記に過ぎないのだ。  


「ご気分が優れませんか?」

項垂れる私に、CAの声は活字のように響く。それは声ですらないのかもしれない。

「……」

同情のI'm sorry.に当たる言葉だけ、どうして日本語には存在しないのだろうか?

「何か、必要なものはございますか?」

CAの声色は(相変わらず活字的だけど)、私の耳朶を濡らす雫だ。私の身体は矢庭に苔むして、刹那に朽ちていく。

「時々、どうしようもなくこうなるんです」
 
空に置いてきた詩は、カラスのエサにもならない。渡り鳥の座標にもならない。ただ、その連なりは確かに存在したはずなのだ。



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