離脱症状。
眼球を埃でこそばされているような居心地の悪さ。眠気というよりかは、覚醒状態に対しての拒絶感に近い。全身がどこか気怠くて、脚色された物語のように手が震えることはないが、欲望が向かう先は一つしか思いつかない。
気付いたら毒されていたのだ。私の身体は、溜め込んだ毒素を躍起になって分解している。それは本来、むしろ心地よいものであるはずだ。しかし、私の思考は裏腹にその毒を希求している。世の中の万物が、往々にしてそうであるように。正しい者が忌み嫌われ、間違った者を信頼する。その点、私は余りにも人間臭かったのだ。
これじゃあ、どちらが幸せなのかが分からない。一度知ってしまえば、世界の形が変わってしまう。毒の見せるそれなりの世界と、哀しいほどにありのままの現実。私は、自信をもって後者を選ぶことができない。
嗚呼、一切の思考の轍から離脱したい。しかし、目を閉じても眠りはやってこない。数多の力学が錯乱する自分という入れ物が、少し憎く感じる。