資本主義の娼婦。

「やっぱりさ、もう一度考え直したんだ。いつまでも夢は追ってられない…追ってられなかったんだよ」

ほの紅い頬は、先輩がまだおぼこであることを示唆しているようだった。

「それでも、先輩がそんなお堅いところに就職するとは思わなかったですよ」

演劇部の先輩であった彼は、売れない舞台役者を続けていた。先輩の名誉のために言っておくと、かなり才能に恵まれていた、と思う。演劇の世界で食っていくには、才能以外にも必須条件がたくさんある。この世界に身を置く人は、そんなことは百も承知だ。しかし、この世界に居続けることはやはり難しい。椅子取りゲームだって、何時間何日何年と続けば死人だって出るだろう。

「演劇は好きなんだけどさ…なんかもう疲れちゃったんだよ。笑うなよ? 本当に疲れきっちまったんだ」

あぁ、こうしてまた資本主義の娼婦がまた1人、また1人と増えていく。資本主義は余りにも強欲だと思う。僕達は、今夜のある意味の葬儀で、角ハイボールを飲むことしか許されていないのだ。

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