スイーツピープル。
彼は呪われたパティシエみたいに、一心不乱にお菓子を作る日があった。
「こんなに、食べきれないよ」
「一口ずつでいいから、口に含んであげてほしい」
テ-ブルに所狭しと敷き詰められたお菓子は、一口ずつでもそれなりの量になった。しかし、その味は格別だった。お気に入りのお菓子は(今日はベリーとイチジクのタルト)、結局全部食べきってしまった。
「そんなに食べて、大丈夫なの?」
彼は残りのお菓子を一思いに貪った。むせかえりながら、何かを償うみたいに咀嚼し続けた。
「時々こうしないと……バランスが保てない」
少し心配になるけれど、その歪みの矛先がお菓子に向いたことを、私はいじらしく思う。私にとって、それは行きずりの男だから。