悪夢の形をした啓示。
「逃げろ!」
目が覚める。呼吸は激しく、冷や汗がじっとりとパジャマを濡らしている。仄暗い部屋。自分が悪夢に魘されて起きたことに気付く。金縛りかと思ったけれど、身体はいともたやすく起き上がった。
スマートウォッチを傾ける。3:13。こんな夜更けに目を覚ますなんて久しぶりだ。心地よい眠りに随分凝っていた僕にとって、それは非情に不気味なことであった。悪夢が、まるで何かの啓示のように感じる。そんな不安を振り払うために、洗面所でうがいをして、水を飲む。大丈夫。僕は現実の世界に立っている。湿った布団に身体を潜らせる。逃げろ。その言葉とは裏腹に、眠りは一瞬で僕を誘う。
「逃げろ!」
そんな声が聞こえたような気がした。夢か現か、僕は首元をなぞる手に懐かしさを憶えた。