桃次郎。
むかしむかし、ある所に少年と少女がいました。少年と少女は、二人で協力して芝刈と洗濯を日々営んでいました。
注:放射性炭素年代測定により、一部の書換が認められる
ある日、二人で洗濯をしていると、川上から大きな桃が、どんぶらこどんぶらこと流れてきました。
「あら、とても大きな桃だわ」
「取ってみようかな」
「駄目よ、窃盗になってしまうわ」
「そうか、じゃあ仕方がないか」
すると、桃からは手足が生え、川の流れをお構い無しに二人の元へ駆け出しました。
「怖いわ」「怖いね」
桃は二人の前で立ち止まると、ぜえぜえと肩で息をして、急速に衰えて行きました。
「……私を、最期に食べてください」
桃はしゃがれた声で話したが、口はどこにあるのか分からなかった。
「どうする?」
「でも、喋るってことは人じゃないかしら」
桃は萎んでいく。
「そうしたら、オウムも人になってしまうよ」
「あら、オウムは立派な人間よ」
「おや、そうだったのか」
桃はあっという間に朽ち果て、フェロモンを多分に含んだ薫香をかもした。
「あぁ、何だか興奮してきたな」
「あぁ、私もよ」
二人は生殖をして、沢山の子供を産んだ。平穏の世で、鬼たちも穏やかに過ごした。