暗闇。
光の下で貴方と逢うのは、気恥ずかしかった。
私はセクキャバ嬢として、この繁華街の生態系に組み込まれている。なぜ入店に至ったか、明確な一つの理由はない。様々な要因や運命の渦が、たまたま私を引き込んだと言うほかがない。初めは少し嫌だったけれど、私は人間が病的なほど慣れる生き物だということを、身をもって体感した。もう入店してから、一年が経とうとしている。不思議と、この店で働き始めてから秒針の進む速度が改定されたみたいに、時間の流れがゆっくりに感じるようになった。だから、一年といっても、もう随分年をとったような気がする。(あるいは、女性性を切り売りしているからかもしれない)
この一年間、一度だけ客と寝たことがある。どのような因果が、私をそのような状況に導いたのかはわからない。私は基本的に客を客以下として見なさないと心のバランスを保てなかったし、彼が私の好みに特別合致していたわけでもない。しかし、私は彼の誘いに尻尾をふるようについていき、まるで運命の夜を過ごすみたいに寝た。そういう説明がつかない夜が、この街では時々起こるらしい。
彼はその後店には訪れなかった。でも、わりに面白い人であったから、今でもたまに遊んだりする。その時は、照明の落ち着いた店で逢う。光の下で貴方と逢うのは、気恥ずかしいから。それが、暗渠のような暗闇で出会った人々の、物哀しい運命である。