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書留の魂。

 僕は言霊っていうものは全くの嘘っぱちだと思っているんだけれど、言わば書留霊ってものにはひとつ思い当たることがあるんだ。あれは奇妙な体験だったから、はっきりと覚えているよ。

 僕の地元には「どんと祭」っていう風習があるんだ。これは、神社で何もかも燃やしてしまえ!っていうのは言い過ぎだけど、お守りやら捨てるのが憚れるような神事関係の物をそれはそれは有り難い炎で燃やすイベントなんだよ。当時小学生だった僕は、出店目当ての周囲とはちょっと違う目的でこのイベントに臨んでいた。それは、ランドセルが10個必要なくらい書き留めた恋文を燃やしてしまおうっていう目的だったんだよ。

 誰にでも性器を晒すよりも恥ずかしい文章を書き残してしまう時期っていうのがあったと思うんだけれど、周囲より思春期が早かった僕のその恋文はまさに恥部そのものだった。それは精通みたいにやってきた。どうにも抑えきれない想いを紙に書いてしまったんだよ。その文章は自分以外に見せては断じてならないものだし、かといってゴミ箱にポイと捨ててしまうのも憚られた。こういう時こそ神頼みっていうのは子供ながらに分かっていたから、僕はポケットに便箋を折りたたんで入れていたんだよ。そして、お守りに紛らわして一緒に燃やしてしまうつもりだった。

 炎の手前まで順番待ちをして、いざ僕の番が来たからお守りと便箋を投げ込んだ。ところが!君はペラペラの紙を投げた経験があるかい?あいつらって、思うように飛ばないんだよ。しかも、待ってましたと言わんばかりに風が吹き上げた。僕の恥部は上空をまるでてふてふみたいに舞ってしまったんだ。

 そしたら丁度よく…って話はここからだって言うのに、そんなに急かさないでよ。ちゃんと絞首台には行くからさ…。

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