部屋になる。
僕は生き霊と分離し、彼に社会生活を送ってもらうことにした。
「こういうのって、普通じゃないよ」
生き霊はいつも真っ当なことを言うから嫌いだ。でも、代わりに社会生活を送って貰えるのだから文句は言えない。
「悪いと思っているよ」
「もう、戻れないかもしれないよ」
「それでもいいさ」
僕は部屋に残り、ベッドの上で目を閉じる。眠りはもちろん訪れない。しかし、僕が欲を出してしまうと生き霊は消えてしまう。僕には部屋の一部になることしか許されていないのだ。呼吸は徐々に浅くなる。僕はそれを受け入れる。ぼくはそれをうけいれる。ボクハソレヲウケイレル。bokuhasorewo……。
「ただいま」
僕はそう呟いた後、ふと首をかしげる。一体、誰に向かって言ったんだっけ? 一人暮らしの部屋は雑然としている。部屋を開けている間、誰かが生活をしていたみたいに。