カオス。
ヒューズが飛んだホモサピエンスA。
「エウレーカ!」
行き交う人の視線がAから避けていく。木が避けてる! 金切り声の少女の残響。
「あなたは本当にそれを求めているの?」
今は無き母の声。マザーズ・ボイス。全身が弛緩し、涙が解れる。
「そうだよ。僕は、そうする他がないんだよ、ママ」
「思うがままに行動しなさい。それが、あなたの人生なのだから」
右手にはピストル、左手にはナイフ。返り血に、自らの血潮。何が赤で、何が黒? 今は分からない。ただ、全身の細胞が求むるがままに、欲動したいと希っている。
これが、人生だったんだ。Aは、それを確信する。不確かな世界。不確かな現実。四方山な感情。A「これが人生だったんだ」人生「これが人生だったんだ」
袖すり合うも、目線が合うも、同じ地球で生まれた縁も、全て僕の人生があったからだ。Aはそう信じて疑わない。Aの思考を、神さえも止めることができない。神は死んだ。その言葉だけが、世界中の諦念の土壌になっている。