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移動軸。

目が覚めた時、知らない場所にいることが好きだった。覚醒と夢見が混ざり合い、自分がいったいどこにいるのか分からなくなる。追い立てるように、何か重要なものを失ってしまったかのような切迫が襲ってきて、それはすぐに早とちりであると気づくんだけど(いわく、目覚めの悪い転寝というものは存在しない)、どこかそういう可能性を孕んだまま拭いきることができない。

移動の時、僕はきまって転寝をする。普段は昼寝をしようだなんて気持ちすら起きないのに、まるで天使が囁くように移動は僕に眠りをもたらす。助手席や新幹線の自由席、飛行機だってフェリーだって、僕にとっては甘美な眠りの時間だ。そして僕は毎回、あの妙な切迫に襲われることを愉しんでいる。

「いつも、眠るのね」

僕は助手席で目が覚める。ここはどこだ? 地球の腸が飛び出したみたいな一本道で、僕はシートベルトで拘束されている。

「いつも、眠るのね」

僕は運転席を見ることが出来なかった。


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