騒音。
管理会社から連絡が来る度に、僕は自分の行動に自信が持てなくなった。
「騒いだり、奇声を上げたりしているって言うんです」
「それがうちの部屋から?」
僕は思わず聞き返した。この街に来てから、部屋に招くような友人もできていないし、僕はとても寡黙に生活をしていた。映画を観る時もイヤフォンをつけるし、独り言すら口に出さない。幽霊が住んでいます、という苦情しかありえないくらいに、静かに暮らしている。
「はい……ドアに耳を当てて、間違いないと」
下の階に住む誰かは、その後も執拗に管理会社を通して苦情をいれてきた。
「昨夜は、大きな声で歌を歌っていたと……」
「口笛をやめていただきたいとのことで……」
「女性との行為は、外で済ませて欲しいと……」
どれも皆目見当がつかないから、僕は少なからず疲弊していった。昔、友人の部屋でいささか騒いだ時、隣の壁から警告のノックが聞こえた時は納得がいった。しかし、その誰かは下の階からわざわざドアに耳を当てに来るのだ。僕に静かな警告をするその誰かはとても薄気味悪かった。
「すみません……今まで、全部僕のせいでした」
本当に怖いのは、眠っている間の責任はとれないということだ。