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あるがままの。

彼は私をヒロインとして描いた。私の名前を付した、私の身体的特徴を備えた、私の言語感覚を共有したヒロインが、その物語には存在していた。私は恍惚した。それは歪な恍惚だった。自分が選ばれた優越感と、言語化できない背徳的な快感が混濁し、私を飲み込んだ。その濁流はあまりに激しく、彼が描いた私を粉砕してしまいそうだった。私は何とか踏ん張り、形を保った。それは、とても敬虔な姿勢だった。

しかし、物語の途中からヒロインに私でないものが、私にはない要素が注がれ始めた。ヒロインは私が着ない服を纏い、私ではない言葉を話し始めた。ページを繰る度に私は薄まっていき、かつての私を懺悔し始めた。私はすでに私でなくなっていて、かつて私であったものは邪悪な偶像だった。

彼はもう、ありのままの私を愛していないのだ。


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