飾り眼。
ラブホテル前の道路は、目に見えない引力が働いている。意志や常識みたいなものは無力で、一思いに飲み込まれてしまう。あるいは、食虫草のようなものなのかもしれない。罠を貼り、ただ獲物が来るのを静かに待つ。僕と君はまんまと罠にかかった訳だ。むしゃむしゃ。
「なんで、こんなところにいるの」
彼女はシャワーを浴び終えると、夢から醒めた。
「さぁね」
僕は本心でそう言った。
「あなたが仕組んだんでしょう?」
僕はすぐに返答ができなかった。仕組んだのは僕じゃないけれども、責任の所在を問われれば僕だろう。社会的には仕組んだとも捉えられるかもしれない。
「薬でも盛ったの? 洗脳をしたの? 私に一体何をしたの?」
「落ち着いて」
彼女は倒れ込んでしまった。僕は慌てて介抱をした。水を飲ませ、背中をさすり、少しだけ胸を触った。僕の太腿の上で眠る彼女は徐々に収縮を始めたが、僕にはどうすることも出来なかった。やがて、一つの乾いた眼球だけが、僕の太腿に取り残された。
もしうっかり眼を落っことしても、僕にはこの眼球がある。そうでも思わないと、この眼球の扱いは難しすぎる。