うそ日記 2024年10月
10月1日
黒いカレー、白いカレーと食べたあと、今度は違う色のカレーにしよう、と言って緑色の野菜を中心に煮る。それはもうカレーではなかった。ただ、できあがりは言うほど緑ではなかった。しょうゆの味がした。次は何色のカレー(煮物)がいいかな、と言って、ごちそうさまをした。
10月2日
洗濯物を取り込もうと窓を開けたら怖いくらいに蚊がぞろぞろ入って来て、まだ夏じゃないの、と思う。すでに蚊取り関連のものはしまってあったのだけれど、慌てて薬局へ。新たに30日用と120日用をそれぞれセットする。何なの、そのずれ、とは思う。蚊はまだ飛んでいる。
10月3日
赤ちゃんがいる。生後半年くらい。ちいかわのぬいぐるみを順番に近づけてみた。異様にカニちゃんに食いつく。本当の意味では食いつかないが。べろべろ舐めまくる。やはりカニなのか。「本物のちいかわ、それが赤ちゃんだ」。全く相手にされないくりまんじゅうさんに語りかける。
10月4日
眼科に行った。診察室が暗くて静かで、時間の流れが遅くなった。目を見られている、と思ったとき、すごく変な感じがした。先生に目薬をさされた。しみた。しみるけどだいじょぶです、と言われた気がする。診察室の外は明るく、医院の外はもっと明るかった。そして賑やかだった。
10月5日
こんな嘘まみれとは別に「本当の」日記を二十歳のころからつけているのだけれど、字が汚くて自分で読めない。一文字目から完全に潰れている。本当は日記なんて書きたくないのかも。あるいは未来の自分に振り返らせないようにしているのかも。ううん、単純に字が下手なだけ。
10月6日
ラスクばかり食べてる。西友で売ってるパンの耳を揚げたやつ。あれ最強だと思う。コスパとか言いたくないので言わないけど(このコノテーションをお楽しみください)、最強だと思う。このこの、という言葉の響きが気持ちいい、とはいえ別にしゃべりながら書いてるわけでもなし。
10月7日
健康診断。プライバシーのため院内では番号で呼ばれる。周りは同じ目的の人たちばかりだ。診察室で問診を受ける。医師はやる気がないのか、流れ作業に疲れているのか、恐ろしく淡々としていた。感情がなかった。診察室では名前を呼ばれるけれど、番号のほうがましだ、と思った。
10月8日
祖母の実家が農家で、その縁もあって今も新米を母に届けてくれている。米の横流しではないけれど、わが家にもその一部がやって来た。米不足と緊縛強盗が横行するご時世、米を奪いに来たらどうしよう。とりあえず、米ないよ、と叫んだ、家の中で。そしてオートミールを食べた。
10月9日
眠っているうちに勝手に布団が出てきて身体を温めてくれたらいいのに。そう思いながら寒さに震え寝ていた。朝になったら、あったかふわふわ毛布がかかっていた。念力ってすごい。もしくは眠りながらに無意識でやってのける自分を褒めてあげたい。それでも鼻がぐじゅぐじゅする。
10月10日
自動ワインオープナーが戻ってきた。お呼ばれしてワインを買っていくときも、わざわざ一緒に持って行く。ウィーンと動く様子をみんなで見守る。おお、とか言って。言ってもらって。ときどき置き忘れてしまう。普及させたいわけではないけれど、わざと忘れてるのかも、と思う。
10月11日
出先でダウエグバーツのコーヒーを二杯飲む。その前と後にも何杯かインスタントを飲んだ。デカフェも飲んだけれど、今更、という感じがする。来客があったので緑茶も淹れた。自分でも飲んだ。夕食後にも飲んだ。もはやカフェインの意味がわからなくなっている。ずっと眠い。
10月12日
取れるはずの取っ手が取れず、フライパンの底もこげつくようになった。以前どちらも新調したのだけれど、これも寿命か。元々は引越し祝いにセット一式をもらった。小鍋や中華鍋も一度は代えた。これは贈答品か自前か。テセウスの船的パラドックスを抱えつつ日々調理している。
10月13日
屋上の憩いの場に芝のスペースがあって、ちょうど日陰で、わあ、と思って腰を下ろしたら、なんかしっとりしていた。濡れているわけではない、ただしっとりしていた。気持ちいいね。とりあえず言ってみた。なんか、しっとりしていた。立って確認してみたら、お尻は乾いていた。
10月14日
ようやく金木犀の香りが漂い始めている。けれど町中でオレンジ色の花が見つからない。どこに樹があるのかもわからない。ところどころで確かに匂いを感じる。それを追って路地を曲がっても見つからない。また匂いが途切れる。さっと振り向く。小さな花の粒が道路に零れている。
10月15日
いびつな形のピーマンを前に戸惑っている。これまでにも、いびつなもの、いやらしいもの、気色の悪いものとは出会ってきた。そういうのは大根とにんじんばかりでピーマンははじめてだ。緊張しながら調理する。いびつなくせに思いのほか苦かった。おいしかったと言ってもいい。
10月16日
今年もようやく道端で銀杏スタンドを見かけるようになった。一袋400円。ずいぶん値上がりしたな。思いが顔に出てしまったのか、店主から「なにせ物価高なもので」みたいなことを言われる。納得しかけたけれど、なんだかすっきりしない。すんすん袋の匂いを嗅ぎながら帰る。
10月17日
酒店に入る。おしゃれな帽子を被ったおじいちゃんがレジ前に座っている。奥には冷蔵室があって名前の知らない日本酒がずらりと並ぶ。ひやおろしの言葉に胸がときめくが、それとは関係のない英語名の瓶を手に取った。会計の際、おじいちゃんがすてきな発音で商品を読み上げた。
10月18日
伯父の古希の祝い。お酒を持って参上する。今日も酒屋に行ってきた。おじいちゃん店主はいなかった。冷蔵室に入ったけれどなかなか決まらず、どんどん寒くなってくる。神様の言う通りで決める。外に出ると震えが止まらなくなる。走る。あやうくお祝いに遅刻するところだった。
10月19日
赤子を抱いて公園へ出かける。けんけんぱゾーンにうっかり足を踏み入れ、跳ねているのだけれど、終わりが見えない。長らくけんけんぱしている。どんどん自分が小さくなっていく気がする。それでも手を離さない、落とさない。赤子は、ぱ、のところにくると、はっと息を呑む。
10月20日
イグBFC用に公開した。その途端に優勝した。
10月21日
芋フェアをやっていて栗かぐやという品種を買ってくる。もう栗やん。名前に栗ついてるやん。と思うが無性に惹かれる。採れたてなので基本まだほくほくで、時間を置くとどんどんねっとりしてくるらしい。領収証をもらう。店員さんの字がめちゃくちゃ汚かった。親近感が湧いた。
10月22日
いつも行くカフェがなにやらにぎやかだった。歩き方診断というイベントをやっているらしい。比喩的な意味だったらどうしようかと思った。お年寄りがたくさん来ていた。店のスペースで足の健康を診てもらっていた。その傍らでコーヒーを飲んだ。どっしり座り、一歩も動かずに。
10月23日
カニの話を書くのも好きだけれど、食べるほうがずっと好きだ。身体と懐が許すならば毎日食べていたい。カニは裏切らない。父と離れて暮らしていたころ、会うときいつも道楽へ連れてってくれた。夢みたいな場所だった。カニとれとれ弁当を食べながらそんなことを思い出した。
10月24日
友人二人が結婚した。どちらも再婚でお互いの子供も皆すでに大きい。片方の次男が小さいころに会ったことがある。「ワンピース途中まで持ってるけど、一度も読んだことない」と言ったら、ちょっとショックを受けていた。なんであんなこと言ったんだろう。でも本当のことだった。
10月25日
怖いお兄さんがシャトレーゼのお菓子を持ってやってきた。こちとら台湾カステラを用意して待っていた。ばくばく食べて、濃いコーヒーを飲み、途中から雪中梅に変えた。お兄さんはピカチュウの(鳴る)おもちゃをくれた。帰ったあと、何かを盛られたくらい眠くなって爆睡した。
10月26日
お祝い用の食事のメニューを考えているうちに面倒になり、たこ焼きでいいのではないか、と思えてきた。たこ焼きがいいのでは、を経たのち、現在、あの人たこ焼きしか食べなかったよな、まで到達している、こちらのマインド的に。気楽にこそなったが、当日、焼くのが超面倒だ。
10月27日
どうやら風邪をひいたことを認めるしかないようだ。わが家で次々と新たな風邪っぴきが誕生する中、その流れに乗らずに済んでいたのに。もう災禍は治まっただろうと思った矢先の喉からタイプの風邪。食間に葛根湯を飲む。漢方の味が好きでテンションが上がるがこれはお薬です!
10月28日
具合が悪い中、郵便局に出かける。途中、仮装した園児の集団が歩いている。追い越しながら、ずいぶんプリンセスが多いな、と思う。幸せそうな国だ。信じられないことにモンハンのフルフル亜種の亜種みたいな恰好の子もいて、二度見してから、咆哮対策が必要だな、と思う。
10月29日
気管支が炎症をおこしているので病院へ。普段の通院で貰っているものも含めて大量の薬を持ち帰る。何から飲んでいいのかわからない。とりあえず吸入器をくわえる。グーニーズやん。ほかの薬はいきなり飲む量を間違えた。それでもぐっすり眠れた。それだから、と言うべきか。
10月30日
洗濯機が洗濯完了を知らせる音と電子レンジのあたため終わりを知らせる音が一斉に鳴った。電子音の高低差と微妙なズレに頭がおかしくなりそうになった。あるいは、もうおかしいのかもしれない(あるいは、とつけて逆のことを言って終わりにする、お得意のパターンだよ)。
10月31日
誕生日プレゼントを買いに行く。服屋に入ったら店内全品セール中だった。アウターはさらに割引、3点以上買うとまた割引、みたいな感じで、怖い話かと思った。会計時にはもはやこちらがプレゼントをもらったみたいな値段になった。ギフトボックス(定価)に入れてもらった。
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