【禍話リライト】「サラマンダーの家」
「サラマンダーの家ってのがあるらしいんすよぉ~」
「サラマンダーの家ぇ?」
ある日Cさんは、知人のSさんから【サラマンダーの家】なる心霊スポットがあると聞かされた。
無論それを聞いたCさんは、(絶対嘘だ!)と思ったそうだ。
「サラマンダーが出てくるとか…逆にどこの世界に行ったらサラマンダー出てくるって話あんだ?ほんとお前そういうのやめた方がいいよ、『【猫バス】見た!』とかいう人だよ、お前それ」
あまりにも馬鹿馬鹿しいその名前に、若干の憤りと呆れの感情をあらわにしつつ、Sさんにそう言い放つCさん。
「いやでも、うちの大学の先輩が言うんですよ。サラマンダーの家があるって、ニヤニヤして言うんですよ」
「いやそれ、酔っぱらって言ってんじゃないの?サラマンダーって、ファンタジーの世界の奴だよ!それ出てきたら何でもいいよ。もうゴジラ出てきてもいいよ!」
結局その時は、そこで話が終わり、【サラマンダーの家】はその先輩の与太話だったいう形で締めくくられた。
そして月日が経ち、CさんはSさんと再び話す機会があった。
幾つかの雑談の後に、Sさんは急にある話題を挙げた。
「ダジャレって良くないすよ」
「はぁ…?」
「サラマンダーの家ですよ。あそこあったんですよ!」
「はぁ?お前の頭の中に、ってそういうこと?」
「いや違うんすよ。『連れてってやる』って言われたんで、サラマンダーの家に―――」
曰く、Cさんにサラマンダーの家があると伝えた後日、件の先輩に誘われたのだそうだ。
内心(何言ってんだこの先輩は…)と思いながらも、先輩の車に乗せられて、他の知り合い二人と共に、サラマンダーの家に向かったのだという。
そして目的地に着き、車は停車した。
当然Sさんらは車を降りたが、なぜか先輩は車から出てこようとしない。
「え?サラマンダー出てくんすか?」
「サラマンダー……んー……」
おちゃらけたように、Sさんは先輩にそう話を振るが、先輩はどこか判然としない反応を見せるだけだった。
しかし、不意にSさんに向けてこう話した。
「中でぇ、ガンガンフラッシュ焚いて、写真撮ってみ」
そう言われたSさんらはその家の敷地内に入り、指示通りに持参したデジタルカメラで撮影をする。
敷地内やその周りには、車で一人待つ先輩を除き、自分たち以外に人はいない。
カメラのフラッシュに照らされ、一瞬辺りが明るく見えるだけで、他にこれと言った異変は見られない。
暫く撮り続けた後、先輩のいる車に戻り、写真を確認してみた。
「ちょっと待ってくれ…」
Sさんの口から小さく声が漏れた。
あの場にはSさんを含め、三人しか人がいないはずだった。
だから人影が写っても、三人分が限度の筈なのだ。
しかしカメラには、自分たちの倍以上の数の人影が写っていた。
(光の屈折か…?)
そんな淡い期待もすぐに打ち砕かれた。
写っている人影には、明らかに自分たちよりも背の小さい人間のものが混ざっていた。
(子供の影あるやん…うーわナニコレ…団体客御一行様やん…)
余りに常軌を逸したその光景を前にして、思わずふざけたコメントがSさんの心に浮かんでしまう。
自分達の周りに、異常なまでの数の人影が写り込んでいる写真。
こちらに向かって、走って来ているように見える、2~3人の子供ような影が写った写真。
全員でそんな写真を確認し、見ては消しを繰り返す。
およそ写真の1/3は、そういった人影が写り込んでいたそうだ。
「ウッワ、怖い…」
「影差してる!ここにも影差してる!」
Sさんらは、写真を確認しつつ各々感想を漏らす。
そしてSさんは先輩に尋ねた。
「どこがサラマンダーの家なんすか…?」
その問いに先輩はこう返した。
「いや、サラマンダーってさぁ。火を吐く蜥蜴なんだよ。」
一瞬何を言っているのか理解に苦しんだが、すぐにその答えは分かった。
(火蜥蜴……ヒトカゲ……人影の家!?)
後日、その家を知っているという人達から聞いたところによると、その地域では有名だそうで、
「そこは、人影が差すからやめろ」
と口を揃えて言われる場所なのだという。
ただ一人、Sさんの先輩だけがダジャレで【サラマンダーの家】と呼んでいるに過ぎなかったのだ。
先輩曰く、かつて自分もその家で怖い目にあった身なのだという。
そして暫く経って、再び知り合いを連れていこうとするも、【人影の家】だと誰も一緒に来てくれなかったので、【サラマンダーの家】と呼称して油断した後輩たちを連れていっていたのだという。
ここまで話したSさんは、続けてCさんにこう話した。
「俺も、歳離れた後輩が出来たら、『サラマンダーの家行かねぇか?』って言おうと思います!」
「やめろよお前……それさぁ、分かんねぇけどアイツらと【一体化】したら、取り込まれちゃったりしたらどうすんの?」
「ああそうか。じゃあサラマンダーの家、滞在時間5分にしよう!」
「何の話なんだこれ…」
結局Sさんのおちゃらけた冗談を結びとして、この話は終わった。
【サラマンダーの家】改め、【人影の家】の話である。
出典:【震!禍話 二十三夜 オールスター感謝祭】
(2018/09/03)(57:30~) より
本記事は【猟奇ユニットFEAR飯】が、提供するツイキャス【禍話】にて語られた怖い話を一部抜粋し、【禍話 二次創作に関して】に準じリライト・投稿しています。
題名は【ドント】氏(https://twitter.com/dontbetrue)の命名の題名に準じています。
【禍話】の過去の配信や告知情報については、【禍話 簡易まとめWiki】をご覧ください。
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