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【禍話リライト】「自宅警備者」
今から10年ほど前の話。
Aさんのお兄さんは地元を離れ、一人暮らしで仕事をしていた。
しかしある時、お兄さんから『調子が悪い』との連絡があり、心配したAさんはお兄さんの住むアパートを訪ねることにしたのだという。
対面すると、以前よりも痩せていて、病み上がりな印象を受けたものの、
「だいぶ元気を取り戻せている」
とのことで、お兄さんの奢りで近所のファミレスに行くことになったそうだ。
早速靴を履き、二人は部屋を出たが、
「あ!そうそう!」
と、お兄さんは何か思い出したかの様に、そう声を上げると、玄関のドアポストを開けて、その中を覗き込み始めたのだという。
「な、何してんの!?」
当然Aさんは、お兄さんのその行動に驚きを隠せずにいる。
するとお兄さんは、
「いやぁ…その、俺しかいないと思うんだけどな。時々誰かいるんだよなぁ…部屋の真ん中に。ほらこっから見えるだろ?」
と、そう答えたのだという。
お兄さんの住むそのアパートというのが、年季の入った古い物件なのだそうで、ドアポストに投函された郵便物などは、玄関の床にそのまま落ちていってしまう仕様だったそうだ。
その為、外からドアポストを開ければ、室内を見渡すことが出来てしまう構造なのだった。
そしてお兄さんは、Aさんに部屋を覗くよう促しつつ、説明を続ける。
「中見えるだろぉ?ドア開けてるとぉ、ほら居間の真ん中が見えるだろう?あそこに誰か立ってんだよ!今は立ってないけどな」
勿論Aさんの目には、誰もいないお兄さんの部屋が映っているだけだ。
(気持ち悪いこと言うなぁ…兄さん…)
そんなお兄さんの言動を不気味に感じつつも、ファミレスに向かった。
そこからは、特段おかしな様子を見せていなかった為、Aさんも先程のことは大して気にせずに食事を摂っていたという。
暫くしてお兄さんは、「トイレ行く」とのことで、席を離れた。
Aさんは一人箸を進めつつ、その帰りを待っていたが、いくら待てども戻ってくる気配がない。
(あれ?どうしたんだろうな?)
流石に心配になり、Aさんも席を立ち、様子を見るためにトイレへ向かった。
しかし既に用を足し終えているのか、お兄さんの姿が見当たらない。
トイレを出て店内を捜してみると、お兄さんはレジの横に設置されていた手洗い場にいたのだという。
そこでお兄さんは、蛇口から水を出しっぱなしにして、ただ一点を見つめていた。
(うーわぁ……ちょいちょいちょいちょい!!)
その状況を訝しむも、Aさんはすぐに気付いてしまった。
お兄さんの見つめるその方向には、あのアパートがあるということに…。
帰宅後、Aさんは家族にこのことを相談し、結果お兄さんを引っ越させるに至ったのだそうだ。
そして引っ越しをしてからは、以前のような体調不良も奇妙な言動を取ることも無くなったのだという。
暫くしてAさんは、お兄さんにその時のことを話したのだが、
当のお兄さんは、
「そんなことあったか?」
と、一切記憶にない素振りをしていたのだそうだ。
住む人を緩やかに狂わせていく。
そんな人ならざるナニカのいるアパートが、今もどこかに存在しているのかもしれない。
出典:【禍話インフィニティ 第十六夜 イベント話+おまけもあるよ】
(2023/10/28)(46:55~) より
本記事は【猟奇ユニットFEAR飯】が、提供するツイキャス【禍話】にて語られた怖い話を一部抜粋し、【禍話 二次創作に関して】に準じリライト・投稿しています。
題名は【ドント】氏(https://twitter.com/dontbetrue)の命名の題名に準じています。
禍話インフィニティ 第十六夜 イベント話+オマケ 23年10月28日(通算327回目)https://t.co/a4Xlld9atK
— ドント (@dontbetrue) October 28, 2023
呼ばれた話 三題 「すいません」「失礼します」「店員さん」/枕元の朗読/お手紙「幽体離脱」マネキンのアジト(改訂版)/思い出の三枚目/自宅警備者/省の人/…
【禍話】の過去の配信や告知情報については、【禍話 簡易まとめWiki】をご覧ください。