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[超短編コメディ小説]かつてメガネと呼ばれた物体へ

こちらに近づいてくると思っていた台風がいつの間にか天に召され、この地球ほしから旅立ち、予想外のさわやかな青空となった日曜日の朝のことだった。

私は、少し早目に出されたこたつの上に置いていたメガネをかけようと手を伸ばした。
だが、そこにあったのはメガネではなく、悲劇と絶望を具現化した、ただの物体であった。
私のメガネはレンズの縁のフレームが折れて千切れ、車に轢かれた小動物が臓物をぶちまけるがごとくに、そばにはフレームからぶちまけられたレンズが転がっていた。

誰だ!
こんなことをした奴は!?
このさわやかに広がる青空一面にゲロをぶちまけるような・・・
このさわやかな日曜日の朝そのものを台無しにするような行為を誰がやったんだ!
いや・・・
わかってる。
わかってるんだ・・・
今の私にはコナン君も金田一少年も必要ない。
なぜなら犯人は“奴”しかいないから・・・

“奴”は、ほうきを持ってる気まんまんのサザエさんに追いかけまわされるお魚くわえたどら猫より人の言うことを聞かない。
ましてや親の言うことなどっ!!
憤る私の視界にかつて“メガネ”と呼ばれていた物体が再び忍び込んだ。

そのショッキングなたたずまいに、私の精神は崩れ落ちそうになる・・・
が、液状化現象を起こした私の精神にありったけの片栗粉をぶち込み、力強く支えてくれる存在が私にはあったのだ!
この間買った新しいメガネだ!

私は、黄金聖衣ゴールドクロスと見紛うほどの輝きを放っている新生眼鏡ニューメガネを装着し、立ち上がった。
今も家の中にうごめいている“奴”を見つけだし、そして“奴”に“お仕置きジャスティス”を与える為に・・・

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どんぶりめしまる
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