最近の記事
マガジン
記事
敗戦から75年。戦争の「中」と「後」。 ――タカクラ・テル「けやきのちかい」が問いかけるもの(『情況』2020年夏号掲載)
ある村の話である。日中戦争からアジア・太平洋戦争へと続く戦争のさなか、農学校を卒業したばかりの戸田利明と大川弘のふたりは、いたいほど手を握り合って、由緒あるけやきに誓いをたてる。「ふたりで村の農業を根本から改革しよう。今のような古くさい農業のやり方ではしかたがない。日本をよい国にするには、農業を改革しなければならない」。隣り合う家で幼少期から一緒に育ったふたりにとって、源義家、通称八幡太郎に縁があるという両家のあいだにあるけやきは、村にある古いしきたり、役に立たないものの象
-