オーバース株を60%超保有するエンターバースの法人登記情報を調べてみた(NIDT)
ぴんとくる人のために先にキーワードを並べておきます。
Nippon Idol Token、WHITE SCORPION、IDOL3.0プロジェクト、オーバース
はじめに(私の姿勢)
ファンの皆さん、あるいはWHITE SCORPIONのメンバーや運営側の皆さんに「強烈なアンチが因縁をつけてきている」と誤解されないよう、またNIDTをまだ知らない人たちに「このプロジェクト期待できないのかな」と一方的な印象を与えてしまわないよう、半分注釈・半分言い訳のような内容を先に書いておきます。
おそらくないとは思いますが、すべての情報が鮮度抜群ではないことから、入れ違いで法人名変更や株式譲渡等が行われており『私の調べたエンターバース合同会社とオーバースの関係性が変わっている、あるいはまったく無関係の会社である』可能性もゼロではないと、免責を打っておきます。ちょっとずるいような気もしますが、個人で調べる範囲には限界があるためご理解ください。
私はIEO参加者でNIDTも保有していますが、それ以外にオーバース側との利害関係は一切ありません。
将来的にこのプロジェクトが、あるいはトークンを活用した推し活がどう発展していくのかいかないのかは分かりませんが、興味は持っているし基本的には応援姿勢です。だからIEOにも申し込みました。
自分自身も学生時代、ジャンルは違えど人前でパフォーマンスする経験をしています。なので、ジャンルに関わらず「パフォーマー」に対する根源的なリスペクトは大切にしているつもりです。
好きなアーティストのライブに行ったことくらいはありますが、アイドルを本気で推した経験はまだなく、業界にもそこまで詳しくはないです。アイドル活動そのものについては深く考察できないため、noteで触れているのはプロジェクトオーナー(運営)側の姿勢に関する内容ばかりです。アイドルファンというよりも投資家目線が強いと思います(私自身は ‘投資’ という言葉はあまり好んで使っていませんが)。
プロジェクトに不透明感や情報共有の不足が何かしらあるのであれば、それはWeb3やブロックチェーン的思想ベクトルとは噛み合わないのかなという感覚があります。
耳触りの良い感想や情報だけを集めて仲間内で酔うこともできますが本質的ではないし、健全な批判や疑問を挟みつつワイワイガヤガヤできないという雰囲気ができてしまうと、中長期的にはプロジェクトにポジティブな影響をもたらさないと考えています。
そもそもオーバースとは?
『株式会社オーバース』は2022年3月に設立された会社で、松井証券・SBI証券・マネーパートナーズ・フォビジャパン等の取締役を歴任してきた佐藤義仁氏が代表を務めています。
ブロックチェーンやメタバースといった新しい技術を取り入れつつ、新しい女性アイドルグループを創造する『IDOL3.0 PROJECT』を推し進めています。
設立されたばかりの新しい会社のため事業を行うにあたって資金が必要ですが、オーバースは『IEO』という最新の資金調達手法で2023年春に10億円超を集めることに成功しました。IEOはよく株のIPO(新規上場)と比較されますが、株ではなく暗号資産(仮想通貨)を発行して資金を調達する手法です。国内では金融庁の監督下で実施されており、オーバースは4例目のIEOでした。
このとき発行された暗号資産が『NIDT(Nippon Idol Token)』という名前で、ファンがこのNIDTを保有していることで、より楽しく新しい推し活体験をできるよう開発が進められています。
そして、2023年10月にオーディションの最終合格者11名が発表され、『WHITE SCORPION』としてデビューが決定。12月には1stシングル「眼差しSniper」、1月には2ndシングル「コヨーテが鳴いている」が配信開始されました。
※オーバース公式サイトのNEWS一覧はこちら。
PR TIMESでのプレスリリース一覧はこちら。
謎の親会社「エンターバース合同会社」
さて、ここからが本題です。
WHITE SCORPIONのプロデュースやNIDTのユーティリティ運用などのプロジェクト全体は、株式会社オーバースが中心となって進めていますが、このオーバースの株式は4つの会社によって保有されています。
40株ずつ保有している3社はプレスリリースが出ていたりすでに事業を行っていたり、それに大口株主とはいえ12.5%だし、まあとりあえずいいです。ただ、過半数の62.5%の株式を保有し実質的にオーバースをコントロールできる立場にある『エンターバース合同会社』は、ちょっと謎なんですよね。
オーバースの創業メンバーである佐藤氏・澤氏が準備段階につくった会社だという情報はたしかに出ているんですが、それ以上の言及はほぼありません。一般に知られている事業実態もないので、私はIEO当初からずっともやもやした気持ちがありました。意図的ではないにせよ、なんかベールに包まれているなと。
スタートアップ企業で創業メンバーが個人として直接株式を保有するのはよく見ますが、個人名ではなくわざわざ合同会社として株を保有することにした理由はなんなのか、エンターバース内のガバナンスはどうなっているのか(2人以外のメンバーがいるのか)など、気になる点がいくつかあります。
旧ジャニーズの話じゃありませんが、どこが株を握っているのかというのはビジネスの世界では外せない重要ポイントです。
情報がないなら自分から取りに行こう、そして個人で法人登記情報を取り寄せたことがなかったのでおもしろい経験にもなるかなと思い、今回試しに調べてみたわけです。
エンターバースの記載がある資料
調べるのに先立って、エンターバース合同会社に関する情報が記載されている公式資料等を、可能な範囲で列挙してみました。
※株式の保有割合については前章で示したため、本章では省略。
グレー背景の引用部は該当する箇所をピンポイントで抜粋しているので、資料内のどこに記載されているかは、リンク先のページでCtrl + Fキーの検索機能等をご活用の上、各自でご確認ください。
▼2022年5月31日 IEOの準備開始に関するプレスリリース
▼2023年3⽉13⽇ 株式会社DMM BitcoinのIEO「販売及び取扱に関する開示情報」
▼2023年3⽉13⽇ 株式会社coinbookのIEO「販売および取扱に関する開示情報」
▼2023年12月29日 定期情報開示(オーバースのIRページに掲載)
オーバースのIR資料・ブログ、取引所のIEO資料、PR TIMES上のプレスリリースなどをざっと漁ったところ、エンターバースに直接触れた箇所は上記の内容くらいでした。
あともう1つ気になったのが、Google検索でヒットする以下のサイト(現在はログイン認証をしないと閲覧できないようになっています)。
住所や事業内容等から、おそらく件のエンターバース合同会社であることは間違いなさそうだけど、あまりにも簡素&チープな作りで何も分かりません。
もちろん今時きれいなWebサイトは珍しくなく作るのも難しくありません、つまり、きれいな偽サイトも多いのでWebサイトの見た目は単体で信用度を判断できるほどの材料にはなりません。とはいえ、もう少しちゃんと情報を載せるなり体裁を整えるなりしてもいいんじゃないかと思うレベルです。
そして、上記のサイトを見ただけだと、オーバースとの関係性が何も読み取れません。。(まったく無関係のサイトの可能性もゼロではないですが)
あと、「About」画面に載っている ‘AS’ は澤昭人氏のイニシャルと推測できますが、両脇の2人は誰・・?
私がエンターバースについてもやもやしているのは表に出ている情報が少ないこともありますが、もう半分はこのよく分からんサイトが放置されていたこと、佐藤氏・澤氏以外のメンバーの影が散らつくこと(他のメンバーがいても気にしませんが素性が分からないことは問題)が理由です。
やったこと
ここからはタイトルにもある通り、法人登記情報を調べた際の流れをまとめています。
(手続きに関することしか書いていないので興味がない方は次章『調べた結果』まで飛ばしてください)
なお私の所感としては、エンターバース合同会社の情報は決して意図的に隠されているわけではないと思いますし、IEO実施に際しては金融庁や業界団体のJVCEA、そして取引所の目も入っています。加えて他の3社の株主も、株式取得の際にデューデリジェンスを行っているはずです。
なので、何かの確信を持って調べたというよりも、どちらかというともやもやした気持ちに対して何かアクションをとりたい、そして自分で調べられる方法を検討したときに登記情報くらいしか思い浮かばなかったという感じです。
そして結論から言うと、法人登記情報を閲覧して新たに分かった情報はほぼゼロでした。
また、私が行った法人登記情報のオンライン閲覧は手数料さえ払えば誰でも行えるありふれたものです。決して特別なルートを使って裏情報(インサイダー情報等)を得たわけではないということを明確にご認識ください。
株式会社オーバースの法人番号を調べる
エンターバースの情報を調べる上でこの作業は不要ですが、どうせなら一緒にと思いオーバースについても調べました。
国内において会社名は重複不可とはなっていないので、日本中に同じ社名がいくつも存在している可能性があります。そのため、まずは法人番号ベースで特定しようとしました。
※法人番号を持つ法人については、税理士ドットコムのQ&Aが分かりやすかったです。
オーバースの会社名や所在地等の基本情報は公式サイトの最下段に掲載されています。その情報を元に、『国税庁 法人番号公表サイト』上で部分一致「オーバース」で検索。商号が完全一致する法人は1つだけだったため、以下の情報が特定できました。
エンターバース合同会社の法人番号を調べる
エンターバースに関しても同名の会社が存在する可能性もあるため、法人番号を調べました。
部分一致「エンターバース」で検索しヒットした法人は1つだけだったため、以下の情報が特定できました。
上記のような調べ方をしている関係上、本ケースでは以下の2つの注意点が存在することになります。
法人名で検索している以上、当該時点での法人名が「エンターバース合同会社」でなくなっている場合は、正しい法人番号にたどり着くことができない。
「エンターバース合同会社」が法人番号を付与されていない場合は調べられない。というか、それは設立登記していないということを意味するから、そもそも登記簿自体が存在しないことになる。
登記していない団体が合同会社の名称で他社株を保有できるのか?という点やIEO審査など諸々の事情を総合的に考慮すると、このパターン2はたぶん有り得ない。
法人登記情報を閲覧する(請求する)
不動産や法人の登記簿は法務局が管理しています。
私は当初、紙媒体での請求(郵送)を想定していたので法務局のサイトから調べてみると、『登記・供託オンライン申請システム』なるものに辿り着きました。
ところが落とし穴が!平日の8時半〜21時しか使えないとのこと。請求前の申請者情報登録ぐらいは24時間できるのかなと思いきや、見る限り登録手続きすらもできなさそうです。お役所あるあるではありますが、なんというか何のためのオンラインシステムなのか、もうちょっとどうにかならないものかと思ってしまいました。。
そうこうしているうちに、実は情報を見るだけなら紙の請求ではなく、別途オンライン閲覧サービスが用意されているらしい、ということに気がつきました。
『登記情報提供サービス』という名称で、一般財団法人 民事法務協会が運営しているようです。
これ動線が悪いですね。法務局のサイトTOPだと画面右下にバナー表示されているのみで、私のように請求したい(情報を知りたい)人が通常のガイドメニューから入ると、登記情報提供サービスという選択肢があることに一切気づけません。
運営主体が異なることは理解しますが利用者からするとほぼ同じサービスなので、1画面内で登記情報を見るにはどういう選択肢があるのかをまとめてほしいものです。
文句のオンパレードになってしまいました。でもこれも、実際に目的を持って使ってみないと気付けないことだったので、まあ興味深いというか良い経験になりました。
推奨環境でMacが無視されていることに面食らいながらも、法務局より圧倒的に長く土日祝日も対応しているサービス利用時間に、助かる〜と思いつつ(というかこれくらいがデフォであってほしい)作業を進めた私。
今回はライトな「一時利用」を選び、利用登録 〜 請求 〜 PDFデータダウンロードまで10分くらいで終わりました。思ったより便利でしたね。
ちなみに、紙ベースでの請求・オンライン閲覧ともに画面内に法人名での検索機能が用意されていたため、前章の法人番号公表サイトでの検索は実質的には必要なかったかもしれません。まあ検算ができたと思うことにします。
(一点、法人番号公表サイトでは住所指定なしで会社名の部分一致検索ができましたが、登記情報のオンライン閲覧では住所指定が必須かつ細かかった気がします。)
調べた結果
前章の方法で「株式会社オーバース」「エンターバース合同会社」の登記情報PDFファイルをゲットした私。
内容としては、前述した通り新しい情報はゼロと言えます。そもそも法人登記情報に何の項目が載っているかをちゃんと把握していなかったのも大きいですが。
細かな気づきとして強いて挙げるとすれば以下でしょうか。
※いずれも2023年12月6日午前11時19分時点での情報。
オーバースの資本金が公式サイトや定期情報開示の7,000万円とは異なり、4,000万円と記載されている。前者は「資本準備金含む」と記載されているので、おそらく差額の3,000万円がそれ。
エンターバースは合同会社であるせいか、オーバースよりも登記簿の記載内容が簡素。
エンターバースの設立年月日は2022年2月7日、資本金は1,190万円。
エンターバースの代表社員・業務執行社員はともに澤 昭人氏(オーバースの取締役副社長兼CFO)。
2022年5月1日に現在の住所に移転するまでは、オーバースもエンターバースと同じ住所(千代田区二番町5番地2麹町駅プラザ901)に登記していた。
エンターバースに関する考察
【この章の内容は完全に個人的推測・妄想であり、登記情報から判明した上記の ‘事実’ とは一線を画します。ご理解ください。】
まず私の『合同会社』への理解が乏しかったので、まあとりあえず茶でも飲めという感じで、解説サイトを2〜3漁って読んでみました。
株式会社と合同会社の違いや合同会社の社員種別に関する記事があったので、参考までに貼っておきます。
オーバースの設立準備のために先立って設立されたと公表されている点、合同会社である点、オーバースの設立時期や当初の登記住所が同じだった点から考えると
「プロジェクトを進めるにあたってとりあえず先立つもの(法人格・信用など)がないと進めづらいから、私公認会計士で詳しいしパパッと法人作っちゃいます」
てな感じで、澤氏がひとまず合同会社を設立したのかもしれません。であれば、代表社員・業務執行社員がともに澤氏であるのも自然な流れです。
合同会社は出資金額に関わらず自由に利益配分率を決定できるそうなので内部的な取り決めまでは分かりかねますが、仮に佐藤氏・澤氏の2名のみがエンターバースの社員(この場合出資者の意)なのであれば、実質的には創業メンバーが個人でそれぞれ株を所有している状態に近いのかなと思いました。
エンターバース(オーバース)に望むこと
とまあ色々見てきましたが、結局私が何を言いたいのかをまとめたいと思います。
あのホームページが本当にエンターバース合同会社のものだとしたら、透明性と信頼性を感じられるよう内容をリニューアルする、もしくはサイトをいったん非公開にしてほしいです。
過半数の株式を保有するエンターバースはオーバースの事業に大きな影響力を持ちます。社員(出資者)は佐藤氏・澤氏のお二人だけなのか、またガバナンス上のどのようなメリット・デメリット等を考慮して今の形にしたのかを、できる範囲で公開してほしいです。
以上の2点です。
なお、1に関しては(エンターバースの連絡先が不明だったため)オーバース宛にメールを送った後ほどなくして、ログイン認証が求められるように挙動が変わっていました(以下画像)。迅速な対応に感謝します。
関係性があるとはいえ、さすがに他社(エンターバース)のことは直接回答はいただけませんでしたが、内容自体は伝えておくとのお返事だったので。
エンターバース関係者の方は突然すいませんね。
でも、「IEOで10億円単位の資金を集めてビジネスをしている以上、ちゃんと透明性と信頼性の構築に努めてください」というのが一IEO参加者としての私の意見です。
それに、メイン領域と関係のない部分で彼女たち(デビューしたWHITE SCORPIONのメンバー)の足を引っ張ることにも繋がりかねませんから。
続編の目次はこちら
法人登記情報の話は終わりますが、関連して他にも色々書きました。というか、書いてたら長くなったので分けました。
ざっと内容が分かるよう目次だけ載せておきます。興味のある方は目次の下にあるサムネイルからどうぞ。
'24/01/08 更新(本文全体)
'24/01/17 最終更新(一部文言修正)
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