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スタッフを主役にする3つの方法

前回は自己紹介を含め、地域密着型デイサービスの責任者だった私が「スタッフを主役にする」ことについて書きました。ただ、具体的にどういう方法を用いたのかは詳しく説明していませんでした。今回の記事ではその辺りを中心に書いていこうと思います。


理念を設定し共有する

まずはこれが一番大事だと思います。「スタッフが主役」という理念を打ち立て、それをみんなに説明するのです。私の場合は、「利用者様が喜ぶのはスタッフが生き生きと仕事をしている時です」と言って、その後にこう続けました。「皆さんが楽しくない、辛い、と思いながら仕事をしているとしたら私の責任です。皆さんがやりがいを持って働ける職場にしていきたいです」


ある日突然責任者が「今日から皆さんが主役です!」と言っても伝わりません。「スタッフが主役」という理念の裏にある、「スタッフひとりひとりを大切に考えている」という責任者の気持ちを伝えなければなりません。なので、普段から責任者はスタッフと接するときの態度や、何気ない会話の中でも相手を尊重する思いを見せるのが大事です。


このような考え方になる前は私もスタッフに対して横柄だった時期がありました。PCを操作し画面から目を離さないままスタッフと会話したり。「困っている」という声があっても見て見ぬふりをしたり。こんな責任者にだけはなってはいけません。(詳しくは書きませんが、私がこんなひどい状態から立ち直ることができたのも、スタッフのおかげでした。)



全スタッフと1:1で面談する

これは地域密着型デイサービスセンターという小規模な事業所だからできたことかもしれません。でも大きな事業所だとしても、一人5分とかそのくらいの時間でもいいのです。その時間の中で「私はあなたのことを大切に思っている」というメッセージを伝えるのです。介護職として働いている人なら誰でも知っている、誰でもできる技法があると思いますが、それを使うのです。


それは、傾聴です。


おそらく初任者研修のテキストからもう出てくる言葉ではないでしょうか。これを知らないのは無資格で仕事をしている人だけだと思います(無資格がダメだとは言っていないです。私も無資格・無経験から責任者になりました)。
スタッフがどんな気持ちで普段仕事をしているのか。辛いところはどこなのか。どういったところが改善されれば、さらに働きやすい職場になると考えているのか。1:1の面談の際にそういったところを傾聴していきます。


時間がなければ「最近どう?」だけでもいいのです。責任者とスタッフの間で普段から良い人間関係ができていれば、自分の思いをつらつらと話し出してくれるかもしれません。

あとはその思いをしっかり受け止め、聴くだけです。


目標を設定してもらう

最後はこれです。

実際、スタッフが立てた目標はどういうものだったのかというと、「入浴をして気持ちよくなってもらう」というようなものでした。あとは、「介護福祉士の試験に合格する」とか、介護の仕事があまり好きになれないスタッフは「介護の仕事を少しでも好きになる」などがありました。

これは私が決めた目標ではありません。スタッフが自ら決めた目標です。スタッフが主人公だ!と言いながら、何も決めさせず全部指示を与えているだけだと、言っていることとやっていることがあべこべになります。だから私は一人一人のスタッフに自分なりの目標を立ててもらいました。

何よりも、自分で目標を決めることはとても気持ちのいいことなのです。

人間は、自分で計画したとおりに動くことがHAPPYだと感じるようにできています。

例えば休日、その日一日何をするのか、どこに行くのか決められるのは自分自身です。
AIが進化した未来、「健康的な体作りのため11時から散歩してください。ランチは○○というレストランに行き、サラダを注文し食べてください」とAIに言われる日が来るかもしれません。
でも、休日の予定くらい自分自身で決めたいですよね?

それと同じ理屈です。介護の職場でよくある光景かもしれませんが、責任者がスタッフに指示を出します。「今日は入浴介助が担当です。怪我をさせないようにやってくださいね。あと、利用者様と話すときはもう少しだけ大きめの声で話せますか?」

こんなふうに言われても「はい、わかりました」と上っ面では返事をするかもしれませんが、心の中では「チッ」と舌打ちされているのがほとんどだと私は思います。(被害妄想かもしれませんが。笑)

だからこそ目標は自分自身で決めてもらうのです。休日に一日の過ごし方を自分で考えるように、働き方を自分自身で考えてもらいます。こういう取り組みを始めてから離職率が減ったというメリットはあっても、不平不満が出るなどのデメリットはありませんでした。

ただし、これもいきなり「目標設定をしましょう」と言っても「何言ってんだ、こいつ」と思われるだけです。前述したとおり、スタッフの一人一人を大切に思っているという気持ちを普段から伝えること、スタッフが主役なんだという理念が浸透していることが前提です。

目標を決めた後は、定期的に振り返る機会をもうけ、出来ていないところがあればどうすれば達成できるのか一緒に考えていくのです。指示を与えるのではありません。あくまで主役はスタッフですから、スタッフに考えてもらい必要に応じて改善策を決めてもらいます。「自分で考え、決定する」という一番気持ちのいい行為は、責任者が取ってはいけません。


まとめ

「スタッフが主役」という理念を打ち立てたなら、誰よりもまず責任者がその理念の実行者でなくてはなりません。スタッフが話しかけてきたら絶対に手を止めて会話をする。そういう何気ない態度だけでも、スタッフを大事にしていることが伝わります。介護職は傾聴のプロですから、利用者様に対してできることがスタッフに対してできないはずがありません。

そうやって土台を作った後で、一人一人に目標を決めてもらいます。目標を決めるのは案外気持ちのいいことです。誰だって自分の人生も、仕事も、どうしたいのかを自分自身で決めたいはずです。

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