落ちこぼれを見捨てるな
この記事は介護の職場で働いているスタッフに向けて、私が地域密着型デイサービスセンターで管理職として働いていた頃の経験をもとに書かれています。
今日は、「落ちこぼれを見捨てるな」というテーマでリーダーシップについての記事を書きます。
佐々という人物
「ノーサイド・ゲーム」というドラマをご存知でしょうか?私は名前くらいは知っていましたが、見たのはつい先日です。2020年8月26日現在、アマゾンプライムビデオで見れますし、人気作品のようなので色々な媒体で見れるかもしれません。私はアマゾンで見ましたが、みなさんも見れるようでしたらオススメしますので見てください。
私がこのドラマで注目したのが佐々という人物でした。このドラマは社会人ラグビーのリーグで最下位だったチームが、優秀なゼネラルマネージャー(GM)と監督のリードによって成長していくドラマです。社会人の話ですが、扱っている題材がスポーツということもあり青春ドラマと言っても良いくらいの熱さがあります。
感動ポイントはたくさんあるのですが、私は落ちこぼれだった佐々が成長していく姿に感動しました。そして、この佐々を見捨てなかったGM、そして誰よりも早くパスを回せるという才能に一番先に気づいた監督に感銘を受けました。
落ちこぼれ
みなさんの職場にもいないでしょうか?何をやるときも要領よくできないスタッフ。動きが遅く、てきぱきと仕事をできないスタッフ。このように一般的に物覚えが悪い、どんくさいと言われるスタッフの他にも、落ちこぼれとみなされるスタッフは存在します。(あなたのことを言っているわけではありませんし、悪口を言っているわけでもありませんよ!)以下に箇条書きにしますが、冷静にご覧ください。
・空気が読めない
・理解力がない
・一人で抱え込む
・ずるい
・自分の好きなことしかやらない
・何を考えているかわからない
・体力がない
・柔軟性がない
このような特徴があったり物覚えが悪いスタッフは孤立してしまったり、陰湿な職場ではいじめの対象になることもあるかもしれません。なぜなら仕事ができないとみなされたスタッフは、「あいつがいるせいで周りが大変だ」と思われるからです。何かミスがあったり仕事が大変な時に誰かのせいにするという職場の空気は、とても悪いものです。介護の職場なら利用者様は人生のプロですから、そういう空気は誰よりも察知しますし、そんな場所で過ごさなければいけない自分を悲しむでしょう。
落ちこぼれが生まれる職場は、三流なのです。
そんな職場は利用者様に対して居心地のいい空間を提供できません。
人生の終盤を今まさに生きようとしている方たちの前で、落ちこぼれを生み、スタッフみんなで非難しているとしたら、どうでしょうか。
人間は誰だって歳を取るたびに体は弱くなり、脳の機能も衰え、老化していきます。一番「できない自分」にいらだったり悲しみを感じているのは利用者様です。
だから「できないスタッフ」を責めるような職場なら、そこは利用者様にとっても居心地が悪いのです。
利用者様は、できないことは増えていくけれどありのままの自分を認めて欲しいと思っているのです。
だから仕事がうまくできないスタッフに対しても、「落ちこぼれ」と非難しないでください。
ワンピースにおけるリーダーシップ
ワンピースという漫画があります。主人公のルフィはゴム人間で、手足が伸びて敵を攻撃するという、お世辞にも強そうとは言えない戦い方です。私が小さい時に流行っていたドラゴンボールでは、主人公の悟空は強くなるときに髪の色が変わったりオーラをまとったり、いかにも強そうな「かめはめ波」「元気玉」というエネルギーの塊を放ちました。ルフィは派手さはないけれど、悟空よりも優っていたところがありました。
それは
仲間のいいところを見つけて活かすことです。
(ここから先は少しワンピースの話が長くなりますので、好きでない方は次の見出しまで飛ばして頂いても結構です。)
ウソップという仲間は、パチンコという(ギャンブルじゃない方)武器を使って火薬玉を飛ばして攻撃するスタイルです。ウソップはワンピースの仲間キャラの中でも戦闘力としては最も低い方です。ドラゴンボールの中でも弱いキャラと言われているヤムチャが気功砲という技を使い、エネルギーの塊を飛ばせるということを考えれば、パチンコで火薬玉を飛ばすだけというのは弱さが際立ちます。
でもルフィはウソップのことをとても信頼しています。それはウソップが誰よりも不器用で、正直だからでしょう。ウソップは自分が弱いことを知っています。だから強い敵が現れた時に、その場から逃げ出してしまいたくなる気持ちを、隠さずに表したりします。でもウソップは絶対に仲間を見捨てて逃げたりはしません。それはルフィが、仲間を見捨てるような人間は仲間ではないという、強い信念を持っているからです。
ウソップはリーダーであるルフィの信念をしっかりと守ります。だからどんな危険な状況の時も、逃げたくなる気持ちを抑えながら、自滅覚悟で敵に向かっていきます。リーダーであるルフィにとっては強いか弱いかはあくまで価値判断の一つであり、それが全てではないのです。不器用で、正直で、素直なウソップはリーダーとしてはある意味、強いだけのキャラよりも信用のおけるキャラなのです。「仲間を裏切らない」という意味においては、一番の能力を持っているのがウソップなのです。
そしてワンピースがここまで国民的なマンガとして成長したのも、ルフィが仲間一人一人の能力を適切に評価し、いいところを見つけて伸ばしたからだと思います。ルフィ自身、めちゃくちゃ強い技が使えるわけではなかったところが、良かったのかもしれません。仲間に頼らざるを得ませんから。そして弱い仲間を馬鹿にするようなこともありませんから。だからルフィの船には落ちこぼれがいないのです。
強いリーダーにはなるな
仲間のいいところを見つけて活かすためには、強いリーダーになってはいけません。もしあなたがとても優秀で一人でなんでもできるような人間だとしたら、リーダーには向いていません。
ノーサイド・ゲームのゼネラル・マネージャー(GM)が、佐々がミスを責められている時に見捨てなかったように。何をやってもうまく行かない佐々の「できない部分」だけを見るのではなく、監督が佐々のパス回しの速さ、つまり「できる部分」に気づいたように。ルフィがウソップの不器用で、正直で、素直な部分を誰よりも評価していたように。
リーダーの仕事は仲間を正当に評価することです。
弱いリーダーはそれができます。自分にできないところがたくさんあると分かっているから、仲間の良さがたくさん見えてきます。仲間の悪い部分だけを見て「落ちこぼれ」を作ることなく、いいところを見つける能力を持っています。だから強いリーダーにはならないでください。悪いところばかりを見てスタッフを責めるのは、正当な評価ではありません。悪いところだけでなくいいところも見た上で、いいところを伸ばすように仕向けていくのがリーダーの役割だと思います。
先ほど「落ちこぼれ」とみなされる人の特徴としてあげたことも、考え方ひとつで長所になったり、やり方一つで周りがカバーできたりします。いや、そもそも別に何も変える必要はないしそのままでいいじゃん、っていうのもあります。
・空気が読めない
→場の空気を変える力がある。
・理解力がない
→難しいことはできないが、簡単なことなら一生懸命やっている。
・一人で抱え込む
→悩む力があるので、一緒に考えれば解決できる。
・ずるい
→人間力(人間らしさ)がある。
・自分の好きなことしかやらない
→自分の好きなことだけやってくれればいいじゃん。
・何を考えているかわからない
→この人のことを知りたい、と思わせる魅力がある。
・体力がない
→体力をあまり使わない仕事でがんばってもらう。
・柔軟性がない
→多くのことはできないが一つのことを集中してできる。
マイナスとみなされていることをプラス、あるいはプラマイゼロくらいに再評価することが大事なんです。慣れればすぐにできるようになります。私も最初はできませんでしたが、できるようになりました。ここだけの話ですが、上記にあげたような特徴を持ったスタッフが実際に私の周りにいました。矢印で示したところが、こういう風にスタッフを再評価していた、という経験に基づく事実だったりします(ここだけの話ですよ!)。
まとめ
落ちこぼれが生まれる職場は三流です。仲間のいいところを見つけ、伸ばしましょう。仕事ができる・できないでスタッフの価値を判断するのは一面的であり、完全ではありません。同じように、悪いところだけを見て評価し、いいところを見つけようとしないことも完全ではありません。色々な視点から見てみるとマイナスをプラス、あるいはプラマイゼロに再評価することは可能です。人生の終盤を今まさに生きている利用者様が居心地よく過ごせる空間を作るためには、スタッフのいいところを見つけ明るく認め合う職場を作っていくことが大事です。