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保存則

◇保存則=移り変わっても総量は保たれる

自然科学には質量保存則やエネルギー保存則など、移り変わっても総量は保たれるという保存則があります。

通貨(現預金)についても同じように、保存則があります。これを五七五で表すと、
 “使ってもカネは減らない動くだけ”
です。

お金を使っても(お金が移動しても)減りません(総量は保たれる)。買い物をすれば自分の手元からお金はなくなりますが、売り手に移動するだけです。お金そのものがなくなるわけではありません。

◇日本経済の転機があった

理系エンジニアの筆者が経済研究に携わるようになったきっかけとともに、経済状況を振り返ります。

銀行の初期のオンライン構築に携わっていた筆者は、1960年代後半から70年代にかけて、日本の家計貯蓄率が世界でも群を抜いて高いことが不思議でした。

平成15年度 年次経済財政報告 より

企業の利益や家計の貯蓄は、お金を余分に集める行為ですから、集めた分だけどこかが減っているはず、と考えたのです。
退職して自由になってから、この問題に取り組むことにしました。
(結論から言うと、企業の旺盛な投資が、このころ家計の貯蓄を増やしていました。)

経済学入門書をぼつぼつ読み始めていたその当時、経済状況が大きく変化し、特に1998年は、日本経済の転機ともいうべき年でした。経済指標が急激に悪化して、名目GDPと銀行貸出残高が減り始めたのです。

日本の未来も、当時3歳の孫の将来も心配になり、貨幣経済の成長と停滞の原因を自分自身で確認したい気になっていきました。そういうわけで入門書だけでなく有名著書も数冊目を通しましたが、納得できませんでした。

◇保存則が見当たらない

 なぜ納得できなかったかといえば、有名著書でも、企業利益と家計貯蓄による他者の犠牲(通貨を減らすこと)に関する視点が欠落していたからです。
マイクロソフトに4兆円の貨幣が集まったとき、マイクロソフト以外では同額の貨幣が減ったはずです。

 お金の
   一極への集中
   その周辺社会での減少
この同時発生が、経済格差を生じます。これを、現行経済学は認めていません。保存則は提示されていません。

その結果として貧困の発生原因を特定できず、対策方法を提示できていません。それどころか社会全般として“貧困を自己責任とする”風潮もまだまだあります。

◇通貨の「来し方行く末」を追う

 そこで筆者は、各種経済活動での通貨の流れを克明に追うことにしました。
経済学は、通貨そのものを中心に据えてはいません。しかし、人々の暮らしを支えるのは、貨幣経済において通貨です。

そのカネはどこから来たか、あのカネはどこへ行ったか。通貨の「来し方行く末」を追うことが大事です

このままでは人々が暮らせなくなるという危機感から、2005年に本を出版しました。その中に20の論理を提示しました(次回)。

本節のまとめ

・経済には保存則が提示されていない
・暮らしを支えるのは通貨。その流れを追うことが大事

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