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東名シェアサイクル(後編)
前編では1日目、静岡駅までの旅路をだらだらと文字に起こしてきたわけだが、後編では2日目、静岡駅から名古屋駅までの旅路を文字にする。前編はこちらのリンクからどうぞ。
前日180kmを走り体もかなり悲鳴をあげていると思えば、そこまででもなかった。全くしんどくないなんてことはないが、筋肉痛の様子はなく、サドルの低さが故の膝の痛みくらいであった。寝坊することを恐れていたが、無事朝6時半に起床。
前日の夜に買ってあった適当な朝ごはんを平らげ、さらにアパホテルで貰える朝食用のパンを3つもらい補給食としてバッグに入れた。コロナ禍で朝食を提供せず、その代わりにフロントでパンやコーヒーを配るスタイルになっていたのがラッキーだった。
腹痛を感じ静岡駅のトイレに駆け込んだりなんなりしていたら、7時半を回っていた。あまり遅くなると静岡駅前のポートの自転車がなくなってしまうので予約をしつつ、7時45分にやっと出発。
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今日の旅は昨日と比べて単調である。基本的には国道1号をひたすら走る。自動車専用道路になっているところは旧東海道などの下道を通って回避する。ただそれだけである。昨日のR246、太平洋自転車道などのような難しい回避ポイントもない。
暫く進むと宇津ノ谷峠に差し掛かるが、この宇津ノ谷峠、峠と呼んでいいかわからないほど峠感がない。宇津ノ谷坂と呼ばれても何も問題ないのではないだろうかという感じがする。というかパーキングエリアがなければ坂としか思っていない地元民も多いのではないだろうか。
宇津ノ谷峠を越えるとR1は自動車専用道路となる。ここは下り方面は歩道を伝っていれば自然と本線から別れていくので何の心配も要らない。岡部宿を通過し、今日最初の自転車交換ポイントである藤枝市街に入る。
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ここで乗る自転車は今回の旅の運命を決定づけると言っても過言ではない。なぜならこの先愛知県岡崎市まで、およそ120kmにわたってサイクルポートが存在しないからである。1kmでも長くアシストをオンにして走れる方がいいし、自転車自体も空気がきちんと入っている方が好ましい。基本的に自転車の乗り換えに時間は使いたくはなかったが、ここ藤枝では十分時間を使っていい自転車を選ぼうと思っていた。
ひとつめのポートで大当たりを引いてしまった。電池残量100%、走行可能距離76km。それでも40km以上はアシストなしで走らなければならないがこればかりは仕方ない。ここからアシストなしで静岡県を横断する過酷な旅が始まる。
藤枝〜岡崎の起伏はある程度わかっているつもりだ。きつい上りは序盤の金谷峠、小夜の中山と、県境手前の名もなき急坂だけである。あとは、豊橋市から岡崎市までダラダラと上り続けることも把握している。今回は平地は全てアシストをオフ、上りのみオンにすることでバッテリーを消費せずに進もうと思っていた。
しかし、前編でもチラッと言った“あのこと”を忘れていたのである。途中からそれに翻弄され続けることになる。愚かな人である。
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島田駅を過ぎ、大井川を渡ると金谷峠に入る。キャノンボーラーには中ボスと知られる峠であり(もちろんボスは箱根)、御殿場周り走ってできている僕にとっては初めての本格的な峠である。アシストを入れ、ギアも軽くして無理せずじっくり上る。ヒルクライム苦手なので。
余談だが、僕は一部の人に上るのが速い認定されているが、ヒルクライムがそんなに速いわけではない。500mほどのちょっとした上り坂を上るのがちょっと速いだけだ。脚質的にはパンチャーっぽいのかもしれない。自分の脚質測れるほど脚強くないけどね。S本氏、わかったな。わかったなら返事をするんだ(?)。以上余談終わり。
金谷峠を上りきると下り。下りきったらもう一回上り。その上りをこなすと今度こそ掛川までの下り坂になる。小夜の中山の辺りだ。車は殆どがバイパスを通っており歩行者もいないので、自転車でまあまあなスピードを出してもまあ比較的安全な場所ではある。だからといってノーブレーキ50km/hで坂を下るのはやめましょう。やった人より。
掛川駅までずっと下りだと思っていたが、実はそうでもないことに気がつく。アパホテルで貰ったバターロール(?)を食べて気を紛らわせたりしながら進む。八坂インターを通過した先、僅かに下り坂ではあるものの、向かい風のせいで全く速度は上がらず。アシストなしで大変な苦行である。しかし、この後の向かい風列伝に比べたらこの時はまだなんてことなかった。
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だましだまし進んでいるうちに掛川駅に到着。もう11時をすぎているという事実に驚愕しつつも腹が減ったので、昨日もらったクーポンを使って駅前のローソンで補給。ないはずのシェアサイクルの脇で、ボッサボサの髪でおにぎりとからあげクンを貪り食う大学生を見て、掛川市民は何を思ったのだろうか。今更だけど髪切っときゃよかったなぁ。
掛川を出て少しすると、天浜線のガードをくぐりR1に合流する。ってか天浜線ってこの辺盛土なんだね。知らなかった。踏切だと思ってた。
まあバイパスらしい飽きる街並みが続く。アシストなし、風景なし、向かい風で走るのは流石にしんどく、この辺りは全く記憶がない。走ってから1ヶ月経ってからやっと文字起こししてるからかもだけど。
袋井市内でまたR1と別れ、東海道を進む。さわかかの本店が道沿いにあったのでとても行きたかったが、とてもそんな腹に調子ではなく、時間的な余裕もなかった。さわやかはどんなに空いてる店でも30分待ちはデフォなのよ。
磐田市に入り、上りが続く。ダラダラと上り始めるのが僕は本当に苦手である。上るならガツンと上ってあとは平地であってほしいと思うタイプだ。しかも磐田市内はアップダウンが多く、チェックポイントの浜松駅までも「隣町なのに」10km以上あり、精神的なダメージはなかなか大きかった。心の支えになったのは天竜川上の250kmポストくらい。
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K312、R152を抜けて浜松駅に到着。ここで見た豊橋まで40kmという看板に絶望した覚えがある。1日目はアシストを使えたこともあり平均速度は15km/h程度を維持できていたが、アシストを使えないこと、脚のキツさなども相まって平均速度は10km/h程度になっていた。豊橋まであと4時間、岡崎まであと7時間と考えるだけでかなり精神的にくるものがあった。
豊橋駅を出てからは向かい風が一段と増した。海沿いとはいえ、こんなに向かい風吹いたら前に進まんよ。1時間経ってもまだ舞阪。さらに1時間はしってもまだ静岡県を脱出できない。なんでこんなに遠いんだ、この区間は。
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遠かった。愛知県にやっと入った。
だが、遠かったのはここまでだけではない。ここから豊橋市内までが個人的には一番しんどかった。自分の中の距離感と実際の距離感があってないんだな。18きっぷの偉大さが改めてわかる。新所原駅〜二川駅は遠かったが、二川駅から豊橋市内までの道のりはもっと遠かった。この間、全然一駅じゃない。勘弁してほしい。お陰で岩屋キャノンボウルとの写真も撮り忘れてしまった。今回はキャノボじゃないしいいけど。
厳しすぎる上りと向かい風に耐え続ける中、ついに自分の精神力が勝った。豊橋公園に到着。県境付近の名もなき激坂からずっとアシストを切っていたので、やっとの思いでアシストをオンにする。こんなに楽なもんなのかと軽く感動。
もうあとは岡崎に向けて爆走するだけである。途中バイパスもなく、ほぼずっと歩道があるので脳死で直進していれば岡崎市街に真っ直ぐ突っ込める。軽く上りではあるものの、山間からなのか風も弱まりほぼ無風になった。暗くなり始めてはいるが、まあそんなもん。暗い道を走るのは慣れているし、パンクだけ気をつければよい。
豊川放水路を渡ると豊川市に入り、国府駅に着く。この駅、絶対初見じゃ読めないよね。こんどクイズに出します。調べてもあんまりいいことないけど。この辺りは国府、御油、本宿と読みにくい地名が続くゾーンだ。
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豊橋から続いていた緩やかな上りが終わり、下りに転ずるともう少しで岡崎市街に入る。藤川宿、美合あたりは名前だけ知っていたが東岡崎との距離感はあまり知らなかったので、正直いいポイントにはならなかった。まあ仕方ない。
岡崎に到着。念願である。感無量。
東海オンエアファンとして岡崎は是非訪れたい街であった。いつ訪れるかはさておき、こんな夜についてご飯だけ食べてすぐに出発するのは本当に勿体無い気がする。またいつか観光しに行く。宣言しておく。きっと岡崎市街を少しぶらついただけで、あーあの動画に出てたとこ!と思える場所がたくさんあるんだろうな。
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夕食はもちろん東海の定番、まんぷく家。暴れん坊チキン、キブサチなど行きたい場所は山ほどあるのだが、帰宅することを最大目標においたとき、あまり寄り道などしていられない。「駅前にあって東海らしいもので食べられるもの」を全て満たすものがまんぷく家だった。ただそれだけである。そういえば昨日も今日もまあまあなエネルギー使ってるのにまともな食事夕食しか摂ってないな。体大丈夫か?
岡崎に来た最大の理由は自転車を変えられるからである。ここから先は残りのバッテリーなど気にしなくて良くなるのだ。ここまでバッテリーの節約しか考えてこなかった僕にとっては、岡崎〜名古屋をシェアサイクルで移動することはウィニングランでしかなかった。距離感がおかしいという苦情は受け付けません。実際どうだったはさておき、この時の気分は本当にウィニングランだったのである。
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東岡崎駅前のポートで自転車を返し、新しい自転車を借り直そうと思った矢先飛び込んできた東海オンエアの自転車。きちんとバッテリーも残っており、拉致して名古屋市内まで連れて行こうかと思ったけど、なんか叩かれるのが怖くてやめた。駅近のポートでバッテリー満タンの自転車を借り再出発。アシストをMAXにしても名古屋市内まで足りそうな様子なので、贅沢にアシストを使うことにする。
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それにしても岡崎市は至る所に東海オンエアの広告があるなぁ。岡崎市民で東海知らない人いないんじゃないの?という印象さえあるが、地元に居続けてここまで有名になれる東海もすごいと思うよ。本当に。
矢作川を越え、新安城駅を越え、知立市に入る。この辺りは本当に一瞬だった。そもそも都市間の距離が短いのはあるが、しんどいという思いが一切なかったことが大きい。名古屋市がすぐそこに見えているのだ。辛いなんていう感情が湧くわけない。
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豊明市を越え、中京競馬場前駅の辺りで名古屋市に入る。名古屋市といっても緑区。名古屋駅まではかなり距離がある。千葉方面から新宿に行く時の、「東京都(江戸川区)に入りました」の感覚に近いだろうか。走っているうちに景色の変化もなく、全然着かんやんと半ギレになりだす。逆にいえば、土地勘がある程度あるからこそキレる余裕があったのである。
笠寺駅を越え、堀田駅を越えるといよいよ名古屋市街に入ってきたような気がする。この時点で22時を少し回ったところ。23時までの到着を目指して、夜の空港線(東郊線?)を爆走する。
鶴舞まで来るとほぼゴールの感覚である。後は本当のウィニングラン。
栄のテレビ塔を越え、愛知県図書館の傍をかすめ、名古屋駅に最も近いポートで自転車を返却する。
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自転車を返したら、あとは徒歩で名古屋駅まで向かう。自転車を返したのが22:53頃だったので、23時名駅着は厳しそうか。一応「帰宅」が目的ではあるが、僕の自宅は名古屋駅のすぐそばであり、こんな大人数が見られる場所で自宅など晒せないので名古屋駅で勘弁してほしい。
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帰宅。23時は少し過ぎてしまったが、昨日の朝9時に出発して約38時間、名古屋駅まで自転車と徒歩のみで到達することができた。命辛々とか言ってみたかったけれど、名古屋駅に着いた時はまだ行けるんじゃね?という気持ちも少しあった。無駄に走ることはしたくないので、すぐに帰宅してその日は寝たが、その日の晩の家の風呂がとても体に染みたのは言うまでもない。
翌朝、その日は夕方にバイトがあったので新幹線で東京に帰らねばならなかった。体を労わり贅沢にグリーン車に座ることに。
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お察しの方もご存知の方も多かろう。ぷらっとこだまのグリーン車である。
「グリーン車にせっかく乗れるんだよ?なんでのぞみなんていう速達種別に乗るの?こだまに乗って座席を堪能するべきじゃないの?(←えげつない偏った思想)」という気持ちで乗るこだまのグリーン車は最高であった。こだまといえど、東京〜名古屋は3時間はかからない。遅いけど、一眠りするにはちょうどいい時間だ。皆さんも是非、昼間に眠って東京〜名古屋、大阪を移動したくなったら(←?)ぷらっとこだまを使ってはどうだろうか。
変な締めになってしまったが、少し運動できる人にとって、東京〜名古屋を自転車で行くというのは丁度いいお題に思える。きついと思ったら途中でリタイヤすることもさほど難しくない。また、東京〜名古屋を24時間以内に自転車で走りきる初級キャノンボール、更には東京〜大阪を同じく24時間以内で走り切るキャノンボールに挑戦するのも面白いだろう。僕自身は、どこかでシェアサイクルのみで初級キャノンボールを達成できないかと考えている。相当厳しそうだけどね。
これからも多くの人にシェアサイクルを使ってもらう、シェアサイクルで旅をしてもらうことを祈り、筆を置くことにする。最後までお読みくださり、有難うございました。ではでは。