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連載小説「転生ビジネス・カオスマップ」第七部 第29話 CIC
「ハルト。やっぱり軍用艦のデータベースはすごいわ」
CIC(戦闘指揮所)で調べ物をしていたんだけどね。
情報量がすごい。
「これを見て。ターゲットとなるアンドロメダAGの企業情報よ」
「おお。さすがに戦時中の主要企業の情報を持ち合わせているんだ」
「財務情報、労働関係、契約関係、顧客状況、調達体制……
もうDDできるレベルの情報じゃない?これ!」
DDとはデューデリジェンスのこと。
企業買収の際に行う、対象企業を洗いざらい調査することを言う。
本来、M&A実行部隊の私たちは、買収する際にはその企業に行って、ビジネス、財務、法務、税務といろんな観点から調査を行うのが通常なんだけど……
「たしかに、すでにこれだけの情報が見れるのであれば、DDもスムーズにできちゃいそうだな」
「株主情報もあるわ。
筆頭株主はヘルメス社ね。
買収するんだから、まずは筆頭株主の説得に行くんでしょ?」
すると、ハルトはにやっと笑った。
「いや。実は単なる買収ではないことを考えているんだ。
今、検証中なんだけど、もし可能性があるなら……
まずはアンドロメダAGのCEO本人に会いに行こうと思う」
「あら、そうなの?」
ハルトは何かアイデアがあるらしい。
検証終わったら教えてもらおう。
それよりも、今は……
「ねえ。ここのAIにお願いしたら、DDレポートやプレゼンも作ってくれちゃうんじゃないかと思うんだけど」
「え?マジで?」
「やってみていい?」
「あ、ああ」
私は、わくわくしながらAIに声をかける。
「ねえ。AIさん。アンドロメダAGのDDレポートを作ってくれない?
とりあえずビジネスDD、財務DD、法務DD、税務DDの四つ」
私は満面の笑みでAIに指示を出した。
しかし……
『……えーっと、メイさんでしたっけ?
今は軍事行動中ですので、プライベート利用はお控えください』
……なんですって?
何?この冷たい反応。
この船、私の決裁でリースしているんですけど?
それなのに、プライベート利用ですって?
むかつくわね、このAI……
私は、ほっぺたを思いっきり膨らませて、目に涙をあふれさせながらハルトに抗議の視線を向ける。
「わかった、わかったよ」
ハルトは苦笑いしながら、AIを諭してくれた。
「艦長。これも軍事作戦立案に必要な情報だ。
最優先で対応してほしい」
『提督。アイアイサー。すぐに対応します』
ハルトが言うとすぐに対応するAI。
……それはそれで、むかつくわね。
なによ、この待遇の違い。