【ノンフィクションかも】おれクビ?明日からAIがM&Aを実行するらしい?(1)AIは交渉する
将来、M&A推進部門はAIに取って代わられる?
夏休みが終わってしまい仕事がはじまったものの、まだ休みボケの頭の中で、ふとそんなフレーズが頭の中に浮かんできました。
早速仕事そっちのけで、生成AIに指令を出してみました。
プロンプト(指令)
Chat GPTが二つあります。この二つのGPTが買い手と売り手を代表してM&A交渉を行うところをシミュレーションしてください。
売り手が売却予定の対象事業は建設事業
なるべく高く売りたいのでM&Aテクニックやバリュエーション技術を駆使して交渉買い手はなるべく安く買いたい
事業価値の妥当性や回収計画を取締役会で説得する必要がある。
シナジー重視。
すでに意向表明を出しており、デューデリジェンスはすでに完了デューデリジェンス結果……
対象事業のEBITDAは10億円。
総資産は100億円、純資産は40億円。余剰資金は20億円。
訴訟リスクが10億円と弁護士から指摘。
キーパーソンが一名。
将来事業は年率5%で成長する予想他にアプローチしてきている会社はないが買い手には伝えていない。
契約骨子を提案する形で交渉を開始してください。
交渉は進むのか?
生成AIは早速、売り手からの契約骨子提案と、買い手の回答と反論をアウトプットしてきました。
売り手からの契約骨子提案の項目は、取引価格、支払い条件、表明保証、訴訟リスク、シナジー効果、クロージング条件です。
買い手はそれぞれの提案内容に回答しつつ、キーパーソンの重要性や将来成長性(年率5%)を論点に挙げて回答しました。
交渉継続を指示してみる
交渉がどう進むのか見たくなったので、継続を指示しました。
すると、売り手と買い手が交互に再提案をすることで交渉が続いていきます。
そして、3往復したらなんと、
”両社は125億円の価格で合意に至りました。”
ですって!
では、どのような交渉だったのか振り返ってみましょう。
取引価格
売り手は最初、譲渡価格150億円で提案しました。
特筆すべきは「訴訟リスク(10億円)について全額を売り手側で負担する」と宣言し価格交渉の論点から最初に除外したことですね。これは予想外でした。
150億円については、対象事業のEBITDA 10億円に対し15倍のマルチプルを適用した結果だと付記しています。
買い手はマルチプル11倍を主張。その後、お互いに将来成長性やリスク・投資回収期間、余剰資金価値などに言及し交渉が激化しました。その結果、
売り手(150億円)
➡買い手(110億円)
➡売り手(130億円:150と110の中間値)
➡買い手(120億円:130と110の中間値)
➡売り手(125億円:130と120の中間値)
で決着しました。
キーパーソン
私が最初の指令であえて「キーパーソンが一名」ということをインプットからかもしれませんが、AIもそこにこだわり交渉のポイントとなりました。
買い手(2年間業務継続保証)
➡売り手(合意。キーパーソンにインセンティブ提供の逆提案)
➡買い手(同意)
将来成長性
5%成長するという前提をインプットしていますが、AIはそれも疑ってかかってきました。
リスクと市場環境を考慮し10年後の事業価値について追加の確認がしたいとの主張です。
売り手は10年間の財務モデルの提供を約束。さらに予測を上回った場合に売り手にボーナス支払いをする条項を提案しました。買い手もこれに同意しました。
シナジー効果
売り手は引き継ぎ期間中のサポートを提供を提案します。
買い手は3年間を要求。売り手も応じ、事業統合が円滑に進むよう全力で協力すると宣言します。
この後は?
こうして現場ではAI交渉によって合意に至ったようですが、さてさてこれで買い手の取締役会で承認がもらえますでしょうか?
次回、「(2)AIは承認を取りに行く」もお楽しみに。