まったりM&A現場閑話★セブン&ⅰに学ぼうPart.1(コングロマリットディスカウント)
なんて、小説みたいな話ですが現在進行中です!
自他ともに認める(?)コンビニ業界M&A大好きなどまんだにとって、
セブン&ⅰの現在の状況は非常に良い勉強材料ですので、今回から3回に渡り、M&Aの視点から分析していこうと思います。
1.セブンアイHDの超概略沿革
祖業は総合スーパー (GMS) のイトーヨーカ堂
1973年、米国元祖セブンイレブンからライセンスを受け、日本初コンビニを設立
2005年に米国セブンイレブンを逆に完全子会社化
さらにセブンイレブン(子)とヨーカ堂(親)と経営統合しセブンアイHDを設立
➡ セブンイレブン(コンビニ事業)が祖業を乗り越えグループの王座に就く2021年には大型M&A(Speedwayを2.3兆円買収)で勝負に出る
そして2024年、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT社)が、セブンアイHDに買収提案
これに反発して、創業家によるMBOおよび祖業売却ディールが動き出した
↑
今ココ!
2.ACT社買収提案からの動きを超ざっくりまとめました
8月19日 ACTが5.5兆円でTOBを提案
9月6日 セブンアイHDは「安すぎる」と拒否
10月9日 ACTが7兆円で再提案
10月10日 セブンアイHDはヨークHD(GSM事業等)を設立・売却する方針を発表
11月13日 創業家がMBOを提案(9兆円)、セブンアイHDはFA入れて検討中
11月28日 ヨークHDの一次入札完了。雑貨やベビー用品を切り売りの観測報道
この間、時価総額はTOB提案前4.6兆円に対し現時点で6.8兆円と高騰。
さて質問です。
ACTから買収提案を受けたセブンアイ・創業家は、
なぜ慌ててGSM売却やMBOと言い出したのでしょうか?
それを紐解いていきましょう。
3.ACTによる買収提案の理由
ACTはカナダコンビニ大手。特に米国ではセブンイレブンUS(シェア1位)と競合(シェア2位)のため、ここを取り込んで1位になりたいはず。
……だけでなく、①昨今の円安で海外勢からすると日本企業は買収しやすいこと、②コングロマリットディスカウントがあげられます。
4.コングロマリットディスカウント
沢山の業種の事業をしている大企業をコングロマリットと言います。
それらの各事業がそれぞれお互いに良いシナジーを生み出して、単独事業よりも大きな価値を生み出していれば問題ないのですが、大企業病と言いますか、シナジー生まれずむしろ価値が低くみられることがあります。
それがコングロマリットディスカウント。
こうなると買収対象になったりアクティビストに狙われたりします。
各事業を切り売りすれば、その差分の利益を享受できるからです。
今回ACTは、7兆円も出してセブンアイHD全体を買収した後、GSMを売ったり日本セブンイレブンを売ったりして差分を回収。本命の米国でトップシェアに出てシナジーを作りたいという感じでしょう。
では、これに対してセブンアイHDや創業家はどのような対応をしたのか? について、次回に説明しますね!
お楽しみに🎵
(おまけ:これまでの経緯詳細版)
8月19日 ACTから法的拘束力がない初期的な買収提案が来たことリーク/リリース。対応検討返答する予定。
・株価は前日1761円(時価総額4.6兆円)→当日2161円(1.23倍の5.6兆円)
※発行済株式数(自己株9,785,671除く)は2,594,770,178株
9月6日 ACTへの回答をリリース。
・当日電話会議があったこと
・$14.86(当日レート142.32円/ドルなので2115円相当)で全株取得の提案だったこと
なので総額5.5兆円に相当
・提案価額が低いこと、法規制に対する懸念(特に米国競争法)を理由に不賛同を表明
10月9日 法的拘束力がない再提案受領をリリース(協議内容は機密)
・報道によると18.19ドル(約2700円)総額7兆円を提案した模様
・株価はすでに前日2230円まで上がっており、当日は2335円(時価総額6兆円)と小幅上昇。市場はある程度織り込み済みの模様
10月10日 中間持株会社設立(スーパーストア事業(SST))をリリース
・社名はヨークホールディングスの予定
・戦略的パートナー招聘の検討開始を決定(つまり売却検討に入った)
・セブンアイもセブンイレブンコーポレーションに改名を想定
11月13日 創業家(伊藤興業)によるMBO構想がリーク、法的拘束力のない買収提案受領をリリース
・創業家は9兆円を想定、メガバンク3行、伊藤忠に打診との報道
・伊藤家と伊藤忠が3兆円、3メガバンクが6兆円。米金融機関にも打診との情報も。
・FA、リーガル入れて検討中
・株価は2228円→2490円(⒈12倍)、時価総額⒍5兆円
11月20日 創業家が今年度中に買収完了の報道。セブンアイは否定のリリース
・株価は反応しさらに上昇。11月末日株価2604円、時価総額⒍7兆円
11月28日 一次入札締切の報道。セブンアイはリリースせず
・住友商事、JIP、KKR、フォートレス、ベインが入札しているとの憶測
・雑貨やベビー用品を切り売るという観測も。
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