連載小説「転生ビジネス・カオスマップ」第七部 第27話 免責保証制度
「じゃあレンタル期間はどうする?」
「そうだな。株主総会を召集して開催するのに1週間……
余裕を見て、2週間で頼む」
「わかったよ。では……」
ハルトは店主と具体的なレンタル契約の締結に向けて話を進めていった。
株主総会?
また、何か企んでいるようね。
まあ、それよりも、目の前の問題はコストね……
「……ハルト、レンタル費用のことなんだけど」
「ん?ああ。どうした?」
「この見積書に書いてある、1週間あたり20億カルマって、何かの勘違いかしら?」
すると、ハルトはすっとぼけた顔で答えた。
「いや、あってるよ。
正規の軍用艦だからね。これくらいの金額は仕方がないよね。
メイの権限で決裁できるだろ?」
何を無邪気に……そりゃ私はCFO。
累積50億カルマまでなら決裁はできるけど……もしかして……
「……最初から、私をお財布のつもりで連れてきたというわけ?」
「ち、違うよ」
ハルトが慌てだした。
「メイの分析力、プレゼン能力、交渉能力。そっちに期待してんだよ」
……もう。どうだか……
「あ、後、免責保証制度がありますが入りますか?」
場の空気を読み取らない店主がトドメを打ちにくる。
「免責保証?どういうこと?」
「もしレンタル中に巡洋艦が戦闘などで破損したり沈没した場合の保険です」
「いくらぐらいですか?」
「2週間で10億カルマです」
ええ!?
流石の私も目を丸くしちゃったじゃない。
「ちょっと。流石に高すぎでしょ?」
「軍用艦のレンタルですからね。
それだけ、危険が伴うので保険も高いんです。
嫌であれば、入らなくても大丈夫ですが……
その時は破損や沈没した場合の免責額は一つ二つ上がりますよ」
……巡洋艦とはいえ正規の軍用艦。
戦闘に巻き込まれる可能性があることが前提。
必然的に、保険で賄える範囲は小さい。
よって、何か生じたときの客側の免責額(自己負担額)は大きい。
この免責額を免除する制度が免責補償制度。
これも高い費用ではあるが、何か起きたときに免責額を払うことを考えるとあながち高いとは言っていられない。
泣く泣く保険に入るしかないか。
2週間でレンタル費用40億、保険が10億……計50億カルマ?
これって私の累積決裁権限ギリギリじゃない!
私はハルトをきっと睨んだ。
完全に、狙ってやってるでしょ?
「あ、あと、リムジンは巡洋艦の担保に、ここに預けておくからね」
「……」
それもCFO管轄の会社資産なんですけど?
「もう、覚えてなさいよ。
この借りはしっかりと返してもらうんだからね!」
もう。
かわりに、一晩や二晩じっくり付き合ってもらうから、覚悟しなさいよ?
バカハルト!
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