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短編小説 M&Aってお魚買うのと似ているよね 第9話 のれん

「まとめると、M&Aは企業買収。買収による事業拡大が目的。買収額は将来いくらお金を生み出せるかで決まるけど簡易的には利益あたりなんぼで計算できる。でもDDで中身をしっかり調査しないといけない……こんな感じね」

 百文字以内でまとめてくるとは、流石だ。

「そうだね。それと『のれん』ってわかる?」
「のれん……って何? 何?」

 やはり、興味津々で食いつく絵夢。俺はにやっと笑う。買収額には将来価値分が含まれるから、現時点の資産価値よりも高い金額になる。その将来価値をのれんという。

「お魚屋さんでいえば、〇〇鮮魚店と書いてあるあれのこと。それはつまり、ブランドや評判、顧客基盤。良いブリを売っていると評判のお魚屋さんはのれんの価値が大きいのさ」
「たしかに、評判って目に見えないけどすごく大事だもんね。わかりやすいわ。ブリに感謝しなきゃ」
「おいおい、俺のおかげじゃないのかよ」

 こうして二人は笑い合った。

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