連載小説「転生ビジネス・カオスマップ」第七部 第8話 べテルギウス&Co.
数ある銀行の中でも最大クラスのペタバンク(いわゆるメガバンクの3桁上をいくギガバンクのさらに3桁上をいくテラバンクのさらに上をいくのがペタバンク)で、ヴァーゴとしてもこれまで長年の付き合いがあるメインバンク『べテルギウス&Co』
流石に超トップ銀行だけあって、この摩天楼の中心地に本社ビルを構えている。
数ある超高層ビルの中でも、トップ10に入る高さを誇り、高層に向かうにつれて線形に鋭角となっていく独特の外観を持つ。
ガラス張りの外壁が黒く輝き、金融の王としてのエレガントな印象を与えている。
「ひゃー、さすがは大手銀行ですね」
「おれは、初めて見たけど、すごいな」
「私だって、普段は担当者がヴァーゴに来てくれるから、こっちから本社を訪れるなんて初めてよ」
私たちは、そのビルの入り口で、はるか上空に向かって聳え立ち、もはや先端を伺うこともできないビルを見上げ、口をあんぐり開けた。
やばい、このままでは、まさに田舎者が都会に出てきたという構図に見えてしまう。
(これでも、転生マッチング業界No.2のヴァーゴですもの。誇りを持たないとね)
私たちは、表情を引き締めると、ビルの中に入った。
『いらっしゃませ。御用をお伺いします』
さっそく、ウサギの形の受付ロボットが声をかけてくれる。
ヴァーゴを担当してくれている銀行員の名前を告げると、ロボットは特別顧客専用エレベーターへと案内してくれた。
『555階で係のものがお待ちしております』
私たちだけしか乗っていないエレベーターは、一気に555階へと昇っていった。
摩天楼の上層階の会議室。
大きな窓ガラスから外を眺める。
目の前には縦横無尽に頻繁に行き交う多数のエアビークル。
眼下には雲。
その隙間から見える地上で無数のビルが雑然と乱立している。
当然、ヴァーゴが本拠地にしている異世界でも、これほどの経済エコシステムは発達していない。
「さすが金融の中心地ね」
お金も、あるところにはあるもんだ。
だったら、2兆カルマくらい、軽く準備してくれないかしら。