見出し画像

短編小説 M&Aってお魚買うのと似ているよね 第10話 減損

「でも、実はのれんの話は笑い事ではないんだ」と真顔に戻ると、絵夢は更に興味を示す。
「なになに?」
「のれんは会計上、会社の資産として計上されるんだ。でも、それは将来価値があるはずだから資産として認められているわけ。じゃあ、予定よりも業績が悪化したらどうなると思う?」

 絵夢は手を顎にあてながら考える。

「えっと……予定より業績が悪化したら、将来価値、つまりのれんにも影響が出そう……そのときはどうなるの?」
「ブリだって賞味期限が近くなった見切り品は半額とかで売るだろ? のれんも価値が減ったら、会計上の資産を減らさなきゃいけない。これを減損というんだ」
「半額値引きは好きだけど、減損って……嫌な響きね」
「まさに、資産が減って損するという意味だもんな。この金額が大きいと会社が傾いたり、下手すると倒産するくらいのダメージになることがあるから要注意なんだ」

 それを聞いて、絵夢はぶるっと身震いをした。

いいなと思ったら応援しよう!